Ep 74 ☆女子バスケ部☆

部活は、体力のない私には本当に大変だった。

練習前のジョギング。
みんなは軽やかに体育館の外周を走っていくのに、私はいつも最後尾のさらにその後ろ…。

はぁ、はぁ……ぜぇ、ぜぇ……

ただ”走りきる”だけで精一杯だった。

「第一中~~、えぃ!おっ!えぃ!おっ!」

部長を先頭に先輩たちの掛け声が響く。
その声に合わせて私も声を出さなきゃいけないのにーー

……出ない。
息が苦しすぎて、声が喉の奥でつっかえたまま。

最初の頃は、先輩の練習をコートサイドで見学するのだが、
”かかとを上げて立つ”というルールがあり、私はグラグラでまともに立っていられない。

ピキッ……
ふくらはぎがつる。
「いたたたたッ!!」

やっと慣れてきた頃には、ボールを持ちながら見学する段階に進む。
でも初めて触るバスケットボールは、とにかく大きくて、
ドリブルをすれば
コロコロ~~...…と勝手にどこかへ旅に出てしまう。

「こらー!もっと腰を落とすんだ!」

顧問の怒号は体育館に響き、私の心にも容赦なく刺さる。

家に帰ると筋肉痛でヘトヘト。
寝たまま夕御飯を食べていると、

「寝るか食べるか、どっちかにしろー!!」

母に怒られるのも、もはや日常。

部員のみんなに追いつくために、私は毎日必死だった。

疲労困憊のはずなのに……
なぜか気持ちは少し軽かった。

部活を始めてから、
クラスの女子に無視されていることを考える時間が、ほとんどなくなっていた。

もちろん、友達ができたことが大きい。

ただそれだけで、
"嫌われているってことを考え続ける癖"が消えていた。

でも今は、もっと別のことで頭がいっぱい。

「バスケットボール、上手くなりたい!」

どうしたら体力がつくんだろう。
どうしたら上手くなれるんだろう。

(あぁ~~小学生の時、もっとちゃんと運動しておけばよかった……
なんで視力だけ良くなっちゃうのよ……)

そうだ。
ーーー走ろう。


   「チッチ物語」続く...