Ep 69 ☆始まったばかり☆
待ちに待った中学生活が始まった。
心機一転、勇気を出して朝のあいさつをしてみた。
「おはよう!」
「…………。」
返事は……無い。
春休みのあいだに性格を変えてみたつもりだった。
でも現実は、そんなに甘くない。
だって、同じ小学校の子たちがそのまま同じ中学に入って来ている。
何も変わらなくて当然
ーーそれは頭では分かっている。
でも、小学校が一緒でも同じクラスになったことがない子はたくさんいる。
それに、違う小学校から来た私を知らない子もいるはずた。
なのに...…無視される。
……どうして?
やはり私は、
嫌われるタイプの人間なのだろうか。
結局、中学校は小学校の延長でしかなかった。
* * *
入学して少し経ったころ。
ある日、知らない少女が教室の後ろの壁にポツンと立っていた。
着ている制服は見たことがない。
透き通るみたいに白い肌。
少し茶色がかったショートヘア。
壁に寄りかかるその姿は、どこか都会的で大人びて見えた。
……転校生だ!
転校生なら、私のことを知らない。
知るはずかない。
まったく違う土地で育ったあの子なら……
話しかけてみたい。
話しかけてみよう。
これは、千載一遇のチャンスだ!
勇気を振り絞って立ち上がろうとした、その瞬間。
私の横をスッと通り過ぎていくクラスメイト。
「やだぁ~なにしてるのぉ~。
こっちおいでよぉ~♪」
自動車整備工場の娘だった。
いつも皆の輪の真ん中にいる、明るくて社交的な子。
そんな彼女が転校生を放っておくはずもなく、あっという間に仲良くなって、二人は皆の輪の中へ消えていった。
……そ、そうだよね。
私みたいな″嫌われ者″より、
賑やかで社交的な子の方がいいに決まっている。
……仕方がない…。
中学生活は、まだ…始まったばかりだ。
