Ep 51 ☆観覧車☆
母には、遠くに住んでいる妹がいた。
叔母は若い頃に都会へ出て、そのまま住みついた人。
私と同じくらいの年の子どもたちがいて、叔母が時々帰ってくる時は、いとこ達と一緒にいろんな所へ出かけるのが恒例だった。
その中で、ひとつだけ鮮明に覚えているのがーーー遊園地。
私の住んでいる町からずいぶん遠くにあったその遊園地は、
まるで夢の国のような存在。
いとこ達と一緒に行けることが嬉しくて、出発の時から気分は遠足気分♪
「着いたら何に乗る?」
「私はねぇ~メリーゴーランド!」
車の中は笑い声でいっぱい。
ふだん無口な兄まで楽しそうに笑っていた。
高い所が苦手な私はジェットコースターをパスして、他の子たちが行ってしまった後ーー
叔母たちが言った。
「じゃぁ、私たちは観覧車に乗ろう」
……観覧車!?
私、高い所ダメなのに……
なのに、なぜかそのまま流れで乗ってしまった。
そう、私は時々、勢いに流されるタイプだったのだ。
ゴンドラがゆっくり上がっていく。
(下を見なければ大丈夫…下を見なければ……)
自分に言い聞かせながら、空や遠くの景色を見つめる。
どんどん昇っていくーー
そして見えた景色は、思っていたよりもずっと美しかった。
空はどこまでも高く、遠くの山々が神々しい。
怖さよりも、その景色に魅せられていた……その時。
ーーゴンッ!
鈍い音とともに観覧車が止まった。
私のゴンドラは、よりによっててっぺんで静止している!
「な、なに!?」
下をちらっと見ると、係の人たちが観覧車に向かって走ってくる!
ほんの数分だったかもしれない。
でも、私には永遠のように長く感じた。
やがてゆっくり動き出し、地上に着いたときに知ったーー。
停電だったのだ。
この日、私の高所恐怖症は、見事にアップデートされたのでした。
