Ep13 ☆無邪気☆
私は癇癪持ちで、とにかくよく泣いた。
ちょっとしたことでも
びぃーーーーーーん!!
と、風船が割れるみたいに大泣きしてしまう。
そんな私は、男子園児たちにとって「いじる」にはちょうどいい存在だったのだろう。
今で言えば「いじり」だったのかもしれない。
でも、私にとっては完全に
"いじめ"だった。
大人になってから、思いがけずその記憶がよみがえる出来事があった。
ある日、母がふと聞いてきた。
「○○君って、覚えてる?」
……誰?誰の話??
まったく思い出せなかった私は、母の話を聞きながら首をかしげていた。
「○○君のお母さんと話す機会があってね……」
話によると、○○君は私と同じ幼稚園の同級生。
彼は毎日のように、家で私の話ばかりしていたという。
「チッチちゃんは、今日も、泣いていた」って。
それを聞いていた○○君のお母さんは、笑いながらこう言ったそうだ
「うちの息子は、チッチちゃんのことが好きだったんだと思うのよ」
……はぁ!?
好きだったぁ~~??
すっかり忘れていた○○君の名前と幼稚園で男子に泣かされ続けた記憶が
ぶわ~~~っとよみがえった。
そういえば、小学校低学年になっても○○君には、しょっちゅうチョッカイ出されてたなぁ……。
癇癪持ちの私は「泣く」ことが精一杯の自己表現だった。
本当に辛かったのに。
……よくある
"好きな子に意地悪してまう無邪気な男の子の心理"
この時、私は自分の辞書に新たな言葉を刻んだのだった。
「無邪気」
と書いて
「ぜえったい、ゆるさなぁーーーーーい!」
と読む。
