Ep 72 ☆次の扉☆

おはよー!

「チッチちゃん、おはよー!」

……返事が返ってきた。
たったそれだけのことが、こんなに嬉しいなんて。

友達が、ついにひとりできた。


嬉しくて、つい欲が出た私は、他の子にあいさつしてみる。

おはよー!

「………。」

あ。
そうだった。

まだ何も変わっていなかった。

私への”無視”。

だけどーーもう、平気。
どうぞ無視してください。
あなた達と仲良くしなくても、私はもう「ひとりじゃない」んだから。

これまでは「どうして私のことが嫌いなんだろう…。」
なんて、悩む必要すらなかった。

だって、嫌われているんだもの。
どうしようもない。
なら、無理に好きになってもらう必要もない。

友達がひとりできただけで、私は
”無敵"になった。

本当に、ここまでが長かった。
まだ全部が終わったわけじゃないけれど、完全な孤独から抜け出せただけでも、中学に入って少し性格を変えてみたのは良かったと思いたい。

そんな時だった。

「チッチさん、どの部に入るか決まりましたか?」

……あ。
忘れていた。
"部活動"という、避けられない難関。 

授業が終わっても学校に居なくちゃいけないなんて……。
ただでさえ辛い場所なのに、他のクラスの子や先輩と一緒に過ごすなんて、また無視されたらどうしよう。
部活の時間、私はどんな顔でいればいいのだろう。

いやだなぁ~~。

黙り込んだ私に、先生が続けた。

「私の娘が部長をしている部があるから、見に行ってみない?」

"バスケットボール部"
初めて聞いたスポーツだった。

先生いわく、小学生の"ポートボール"に似ているらしい。

よく分からないけれど、イヤだったら行かなければいい……はず。

「顧問の先生に話しておくからね」

私は嫌われてるから、いじめられているから、本当は行きたくありません!!


……なんて、言えるわけもなく。

流されるように体育館へ連れて行かれる私。

あ~~~~もうっ、どうなるの、どうなるの、どうなるのぉ~~!!!


    「チッチ物語」続く...