餡子と小倉山 | 千歳日記

千歳日記

この先にある未来を…

たとえどんな未来でも私は見届けてみせる

最後まで…必ず

和菓子に付き物と言えば餡子です。

餡子には幾つもの種類があり、小豆で作った粒あんにこしあん、白いんげんや白小豆で作る白あん、青えんどうのうぐいすあん、白あんに卵の黄身を混ぜた黄身あんなどがあります。

餡子と言うと多くの方が小豆で作った黒いあんを思い浮かべると思いますが…小豆で作ったこの黒い餡子の分類は上記の二つでなく、【粒あん】【こしあん】【つぶしあん】【小倉あん】の四つだという事をご存知でしょうか?

【つぶしあん】はあまり聞きなれないのですが、これは粒あんを皮が残る程度に潰したあん(つぶあんとこしあんの間くらい)を指すそうです。

そして私は【小倉あん】は【粒あん】の異名だと思っていました。

【小倉あん】とは『こしあんに大納言(大粒の小豆)を煮てから蜜に漬けたものを混ぜて作ったもの』なのです。

手間のかかる【小倉あん】は高価なものと考えられます。

となると、市場にある食べ物で【小倉あん】と銘打ってるの中、本物はどのくらいあるのかなと疑ってみたり…(笑)





ちなみに【小倉あん】の小倉の名の由来は京にある小倉山からです。

小倉辺りを産地とする大納言が、もっとも良質だとされていたからです。

そもそもの始まりは、空海上人が唐(私が居る時代で言うと清)から持ち帰った小豆の種を栽培し、菓子職人が砂糖を加えて練り上げ、餡子として御所に献上したのが発祥とされています。

そして誰もが知っている小倉百人一首の名の由来も、この小倉山からなのです。

歌人である藤原定家が小倉山の山荘で選んだ歌がるたを、小倉百人一首と呼びます。

百人一首にある、藤原定家の歌はと言うと…

来ぬ人を まつほの浦の夕なぎに 焼くや藻塩の 身もこがれつつ

(訳)松帆の浦の浜辺では焼いている藻塩の煙がなびいているが、私のこの身も来てくれぬ人を想って、恋焦がれているのです。

高価で美味しい小倉あん。
恋焦がれるじれったい気持ちを綴った藤原定家。
食い気と色気は意外と近しいのかもしれません(笑)