少し気持ちが高揚しているようで、眠れそうにもありません。
近藤さんと土方さんにお茶をお持ちしようかとも思いましたが、心配されて怒られるだけと思い、それは諦めました。
他にも何か出来るわけでもなく…ふと筆を取りました。
街中では怪我人も出ている様子。
ますます心配で眠れそうにありません。
つらつらと日記を書くものの、不安な言葉しか浮かびません。
(ふう…)
「雪村…起きているのか?」
廊下から誰かに声をかけられました。
そっと襖を開けて覗いてみると…
「斎藤さん!どうしたんですか?こんな夜更けに?」
「どうしたはこちらの台詞だ。雪村は何をしている?」
「なんだか眠れないし、落ち着かなくて…怪我人の救護のお手伝いをした方がいいのかな…とか…」
「あんたらしい発想だが、今は無用だ。羅刹隊の制御が効かず暴れていると連絡が入った。俺は山南さんと合流して羅刹隊を…」

途切れたその言葉の続きは言わずともわかりました。
紛いもの鬼となり果て、自我を失った者の行き先は『永遠の死』しかないことを。
「…朝になれば、嫌でもあんたの力を借りることとなるだろう。だから今は眠れ。」
「はい…。斎藤さん、くれぐれもお気をつけて、いってらっしゃいませ」
ペコリと頭を下げ、私はそっと襖を閉めて、お布団へと潜り込みました。
(どうか…誰も傷つきませんように)
そしてぎゅっと目を瞑り、強く祈りました。
(斎藤さんの抱える闇が…色濃くなりませんように…どうか…)