嵐の夜 | 千歳日記

千歳日記

この先にある未来を…

たとえどんな未来でも私は見届けてみせる

最後まで…必ず

外は風が強く、屯所や襖の軋む音で目が覚めました。

少し気持ちが高揚しているようで、眠れそうにもありません。

近藤さんと土方さんにお茶をお持ちしようかとも思いましたが、心配されて怒られるだけと思い、それは諦めました。

他にも何か出来るわけでもなく…ふと筆を取りました。

街中では怪我人も出ている様子。

ますます心配で眠れそうにありません。

つらつらと日記を書くものの、不安な言葉しか浮かびません。

(ふう…)

「雪村…起きているのか?」

廊下から誰かに声をかけられました。

そっと襖を開けて覗いてみると…

「斎藤さん!どうしたんですか?こんな夜更けに?」

「どうしたはこちらの台詞だ。雪村は何をしている?」

「なんだか眠れないし、落ち着かなくて…怪我人の救護のお手伝いをした方がいいのかな…とか…」

「あんたらしい発想だが、今は無用だ。羅刹隊の制御が効かず暴れていると連絡が入った。俺は山南さんと合流して羅刹隊を…」



途切れたその言葉の続きは言わずともわかりました。

紛いもの鬼となり果て、自我を失った者の行き先は『永遠の死』しかないことを。

「…朝になれば、嫌でもあんたの力を借りることとなるだろう。だから今は眠れ。」

「はい…。斎藤さん、くれぐれもお気をつけて、いってらっしゃいませ」

ペコリと頭を下げ、私はそっと襖を閉めて、お布団へと潜り込みました。

(どうか…誰も傷つきませんように)

そしてぎゅっと目を瞑り、強く祈りました。

(斎藤さんの抱える闇が…色濃くなりませんように…どうか…)