屯所に河童が出るという噂が立ち始めました。
(河童…まさかね…)
私は以前の騒動を思い出してしました。
思い起こせばゾッとする場面もありましたが、あれから私も少しは大人になったので、あんな失敗はもうしません。
…しないと思います。
…たぶん(笑)
暇を持て余していた私は、山南さんから妖怪百科という本を借り、改めて河童について勉強する事にしました。
河童は別名『河太郎』と言います。
想像上の生物と言われていますが、水戸藩で捕まった河童の絵が残されているため、生存している可能性は捨て切れません。
外見は子供のような体格で、全身は緑または赤い色。
頭部には皿があり、水分がなくなると死んでしまうそうです。
口には嘴が、背中には亀の様な甲羅が、手足には水掻きがあるとされています。
醜悪な外見ではありますが、水神の仮の姿、依代とも言われています。
川や沼に住むと言われていますが、南方の河童はお酒飲みで、海に住んでいます。
相撲を好み、これは相撲が元々水神に捧げる行事だったためだそうです。
仏前に供えたご飯を食べた後に闘えば、子供でも河童に負けない…いざとなったら罰当たりではありますが、この方法でやっつけるしかありませんね。
好物は胡瓜、魚、果物…果物はちょっと意外。
胡瓜好きは、水神信仰のお供え物に欠かせなかった事に由来しています。
河童はやはり尊い存在なのでしょうか?
となると河童の正体は伊東さ…いえいえ(汗)なんでもありません!
さて、一通り河童について学び終えたので、山南さんに本を返しに行こうと廊下を歩いていると、ワイワイと茶化す声が聞こえてきました。
隊士さん達は盛んに河童、河童と叫んでいます。
(まさか…河童捕獲?嘘でしょ!?)
通りすがりに私が見たものは…
(あっ…河童…)
頭のてっぺんの髪を、見事にまぁるく剃り上げた隊士さんでした。
(河童って髪型の事か…)
どうやら賭けに負けた罰として、その様な髪型にされてしまったそうです。
(今回は大きな騒動にならなくて良かった…)
人ならぬ者に会うなんて事は、そうそうあるわけがありませんね。
羅刹以外には…。