
私はした派!
本文はここから秋らしい事…そうですね…
遠くに出かけたわけではありませんが、紅葉を楽しむ事が出来ました。
いちょう並木は探せず、銀杏の生っているところは見れずじまいですが…。
山吹色の愛らしい金木犀を見つけることも出来たし、結構秋を満喫してたと言えますね。
頻繁に外に出られるわけではないで、多くは屯所の庭の風景の移り変わりを眺めています。
爽やかな新緑の季節から葉が焼けるほどの暑さを過ぎ、今木々達は赤や黄色に染まった葉を風に揺らしています。
風に揺られハラハラと舞い落ちた葉を箒で丁寧にかき寄せると、土の匂いと葉の香りが鼻を擽ります。
撃剣場からは木刀のぶつかる音が響き、時折威勢のいい雄たけびが聞こえたり、悲鳴に似た叫び声が耳に入ったり。
土方さんや山崎さんに呼び出されて、石田散薬を手に走り回るそんな慌しい毎日を過ごしています。
ふと手を止めて空を見上げると、空高くに鳥の姿が見えました。
あれは…渡り鳥でしょうか?
大空を翔ける渡り鳥。
彼らは私にはない自由を持っている。
それでも叶えたい願いが…私にはあるのです。
「何見てるの?あんまりぼんやりしていたら鳥に糞を引っかけられるんじゃない?」
「…相変わらず毒舌振りは好調な様子ですが、お体の調子はいかがですか?沖田さん。」
「平気だから起きてるんだけど?」
(平気じゃなくても退屈だって言って、すぐにふらふらするじゃないですか)
なんて言葉で大人しくなる人じゃない。
私は部屋から羽織るものを取ってきて、沖田さんに差し出しました。
「夕刻の風は冷たいんですから、体を冷さないでください。それから…あの…先日はありがとうございました。」
「なんの事?」
「斎藤さんに見取り稽古の事を頼んでいただいた件です。」
「…僕から頼まなくても、君が頼めば一君は受けたと思うけど?」
「でも…斎藤さんはお忙しいから…」
「生憎と僕も毎日毎日暇じゃない。」
「そっ…そうですよね。あの…本当にありがとうございました。」
なんでだろう。
胸騒ぎがして上手く喋れない。
どうしてなのかわからないけど、正直言って沖田さんの顔を見るのが怖い。
知ってはいけない『何か』に気がついてしまうそうで…。
「総司、何をしている。副長から寝ていろと言われているはずだ。」
「噂をすればなんとやらか…ねぇ、一君、千歳ちゃんからお願いされて困ってるんだよね。この子、どうしても僕と一君の打ち合いが見たいんだって。」
「なっ!そんな事言って…」
言ってませんといいかけたところで沖田さんにジロリと睨まれた。
私も負けずに睨み返したけど…ある考えが頭の中を過ぎった。
「…はい、先日見取り稽古をさせていただいた際大変勉強になりましたので、今度は沖田さんと斎藤さんの打ち合いを見てみたいな~なんて。ほんの少しの時間でいいんです。もちろん沖田さんの体の負担にならない程度で。沖田さんの気分転換にもなるかな~って…やっぱり駄目ですよね。」
「…」
斎藤さんは無言で背中を向け立ち去ってしまい…
(やっぱり余計な事だったかな…)
沖田さんは薄く笑みを浮かべたまま斎藤さんの背中を見送っていて…
(また上手い事担がれて馬鹿な事言ってるなって、そう思ってるのかな…)
戸惑いながらオロオロしていると、斎藤さんは木刀を手にして再び現れました。
「総司、お前が倒れるまで打ち合う気はない。早急に勝負をつける。いいな?」
「それは僕の台詞なんだけど?さっさと一君を倒して終わらせるよ。」
投げられた木刀を手にした途端、沖田さんの顔つきが変わりました。
次の瞬間、木刀のぶつかる激しい音が庭に響き渡ります。
声もかけられないほどの迫力に息を飲み、私はただ二人を見守る事しか出来ません。
目の前にいるは二体の美しい刀神。
私は彼らから目が離せず…その戦う姿をただ黙って見つめていました。
そして自分は決して彼らと交わる事は出来ないのだと、彼らと同じ道を歩く事は出来ないのだと強く思い知らされる。
それでいて彼らと同じ道を歩きたいのだと、追えるところまでその背を追いかけたいのだと強く思うのです。