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今日は暑い一日でした。
雲が多いものの青空が広がっていて、絶好のお洗濯日和でした。
…実は今朝は寝坊してしまったのです(苦笑)。
今日私は非番だったという事もあり、皆さんは気を利かせてあえて起こさなかったようです。
しかし午前の内に洗濯を済ませておかないと、洗濯物は溜まる一方です。
私は大慌てで起き上がり、部屋を飛び出しました。。
非番の日までせかせかと走り回る私を気遣ってくれる言葉、相変わらずの苦言、明るい笑い声、私の名を呼ぶ声、いつもと変わらない日常の場面。
こんな日がずっと続くといい…こんなお願いごとは贅沢過ぎますね。
七夕当日は雨は降っていなかったものの空は曇っていて、夜は星のひとつも見えませんでした。
それでも私は厚い雲の向こうにある美しい星の河へと願いをかけたのです。
「あ~もっと肉が食いてぇ!くっそ…駄目もとってわかってるけどよ、短冊に『たらふく肉が食いたい!』って書きたいぜ。」
「肉じゃなくても芋でもなんでもいいから、腹いっぱい食いたいよな。後は酒と…綺麗な姉さん方だな。じゃあ俺は『角屋で綺麗どころに囲まれて思いっきり飲み食いがしたい』だ。」
「くす…それだけお酒飲んでたら食べるものも綺麗なお姉さんもいらないんじゃない?それにあんまり食べると脳まで筋肉になりそうだ。僕は少しの食事とお酒があれば十分だな。この身一つと刀があれば『近藤さんの願いを叶える』事は出来る。」
「…あんたは食べなさ過ぎだ。酒は控えろ。飯が喉を通らなくなる。もっと飯を食え。精をつけろ。ただでさえ夏は体力が落ちやすい。それにあんたは普段から無茶をし過ぎだ。仕方がない、あんたの願いが叶うように俺は『精のつくものが食べられるように』とでも書く事にしよう。」
「やれやれ…男所帯に口うるさい女房がいるみてぇだ。ったく…酒が飲みにくくなるぜ。ちっとは静かに酒を飲みたいもんだぜ。そうだな…俺なら『惚れた女と静かな時間を過ごしたい』だな…。」
「だったら酒を控えたらどうだ?酒を控えた分給金が浮く。給金に余裕があるのなら惚れた女でも何でも迎えればいい。そうしたらここから酔っ払いが一人減る。俺はいちいち酔っ払いに怒鳴り散らす必要もなくなる。『心の平穏を手に入れる事』が出来る。」
「なんだなんだ、皆もっと夢のある願いごとはないのか。千歳君が呆れ返ってるではないか。」
皆さんの会話に笑いを堪えながら食事を進めていると、近藤さんの呆れた声が部屋中に響き渡りました。
「近藤さん、お気になさらないでください。」
「すまんな…なんにせ男所帯ゆえ気の利く言葉がなぁ…。」
「いいえ、楽しいです。皆さんの会話を聞いてるの。」
「そうか…ならいいのだが…うむ…そうだ、千歳君の願いごとはどんなものなのかな?叶う叶わないなど構わん。千歳君の心からの願いごととはどんなものなのか、俺に聞かせてはくれぬか?」
「私の願いごと…ですか?」
「そうだ、女子なら欲しいものがたくさんあるだろう。いや…我々にそれを叶えてやれる力はないのだが…」
私の願いごと
私がほしいもの
「…それだったら、ずいぶんと前に手に入れてしまいましたから大丈夫です。」
そう…私は欲しかったものを手に入れる事が出来たのです。
それを手に入れた時『夢を叶えたり欲しいものを手に入れるには、自ら行動しなくては手に入らない』のだと気がつきました。
難しい事はしていません。
ただ己の信じるままに行動に移した、それだけです。
ただ…こんなに早く手に入るとは思っていなかったので、手に入れた瞬間は喜びと同時にひどい脱力感を覚えました(笑)
「そうか…それが何であるのか興味はあるが、女子には秘密にしておきたい事のひとつもあるだろう。うむ…なんにせよよかったよかった。千歳君の願いが叶ってよかった。」
「いいえ。私はずうずうしいからもう一つ願いごとを抱えているんです。それが叶うかどうかは皆さん次第なんです。」
「そうか!では一日たりとも気を抜いてはいられないな!」
そう言いながら笑う近藤さんの瞳の中に、私は自分の願いごとを映していました。
私の願いごとは
それは『皆さんの夢が叶う事』
あなたが夢を叶える姿を見てみたい。
夢を叶えるためにあなたが努力している姿を知っている。
それを手に入れるために苦しみ、もがき、辛くとも自分の力で前へ歩く姿を知っている。
だから…
だからどうか叶えてください。
私のたった一つの願いごとを叶えてください。