千歳という名は『幾千の歳を重ねる』という意味を込めてつけたのだ。
長生きして欲しいという思いももちろんあるが、長い年月を重ねる中で、大切なものをたくさん見つけられるように…」という思いを込め、母さんと一緒に決めたのだぞ。
私は自分の名を恥じた事など一度もありません。
でもここに部屋を置くにあたり、『雪村』を名乗りながら『千鶴』ではなく自分自身の名前『千歳』を名乗って過ごす事は…本当は少しだけ迷いがありました。
一度名乗れば名を変える事は安易ではありません。
確かにここでは名を書き換える事は簡単に出来ます。
でもそれぞれに意味を持つ『名』を変えるには大きな理由、そして新しい名に込めた大切な意味が必要だと、私はそう考えてるからです。
何日も迷った結果、私は私の名『雪村 千歳』を名乗る事にしました。
父と母から与えられた名前です。
皆と違うと臆する事などない、恥じる事はないとそう思いました。
私がここに来てから半年ばかりが経ちました。
私はぼんやりと過去の日記を読み返してみました。
初めて貴女に声をかけられた事、貴方と初めて言葉を交わした日、貴方を見つけたあの日の事、貴方から強くある意味を教えられた事…いろんな想い出が脳裏に甦ります。
そうそう…私の名を『千鶴』と間違えた人が二人ほどいましたっけ(笑)
それから…ただ一度だけ『千鶴』を名乗らなかった事を後悔、いえ後悔と言うより『誤りだったのでは?』と思った事も思い出しました。
でも、これでよかったんです。
今は心からそう思う、迷わずにそう思えます。
幾千の歳を重ねる中で、私はたくさんの大切なものを手にしていこう。
幾千もの時を越え、永遠に変わる事のないその魂の生き様をこの目に焼きつけよう。
いつまでも どこまでも あの空の青が続く限り 何度でも…。