第一印象 | 千歳日記

千歳日記

この先にある未来を…

たとえどんな未来でも私は見届けてみせる

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第一印象、なんて言われる? ブログネタ:第一印象、なんて言われる? 参加中
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このあめーばーという場所で最初にその人の『ひととなり』を知るには、ぷろふ画と呼ばれる『顔』と最初に見る『言葉』だけが頼りです。


七割…いえ六割くらいでしょうか、私は第一印象でその人の『ひととなり』を感じる事が出来ます。


『見える』ではなく『感じる』んです。


なんとなく、なんとなくですがわかるのです。


ところで私に対する第一印象ですが…正直どうなんでしょうね。


推定ですが、【何を言ってもにこにこと笑っている優しい人】といった印象を抱いて声をかけてきたなと、そう思った事は数回あります。


確かめる術はありません。


そういった人とは会話が成立せず、そのまま別れてしまいましたから。


相手にとって私は【会話しづらい人】だったんでしょうね(苦笑)。











あの冬の夜、私は【見てはいけないもの】を見てしまい、強制的に新選組預かりの身となりました。


寒空の下で怯える私を彼らがどう見ていたのか…きっと運の悪い愚かな人間だと思ったのでしょうね。


反対に彼らの第一印象はどうだったかなんて聞かれても、私に答える事は出来そうにありません。


だからその後


【彼ら】を初めて見つけた時、私がどう感じたのかを綴りたいと思います。






「このようにゆっくりと…そう…それでいい。刀の手入れは大切だ。あんたは俺達のように人を斬る機会などないだろう。だからといって手入れを怠ってはいけない。わかるか?」


「はい。刀には刀工達の魂が宿っています。粗雑な扱いは出来ません。」


私は斎藤さんに習いながら、刀の手入れをしていました。


斎藤さんの第一印象は【明敏】【親切な人】です。


私の知りたい事をきっと教えてくれる…そう思いました。


『鬼神丸国重とは斎藤さんの愛刀の名なのですね。勉強になりました。よかったら色々と教えていただけませんか?』


私の方からそう声をかけた記憶があります。


そこから刀の話、武士道の話が始まり、剣の稽古をつけてもらったり…刀に詳しくなりたいとか武士になりたいわけではなかったのです(笑)


しかしその話の中から疑問が生まれ、その疑問を口にして答えを得て、また疑問が生まれて…その繰り返し。


斎藤さんは私の目線に立ち、私のわかる言葉でわかるまで教えてくれる。


だから私の知りたい事以外の大切な事もたくさん知る事が出来ました。


「…あれ?ちょっと待ってください。少し遅れてしまったようです。表のハバキ元から切先に打ち粉をかけて、次は裏を返して…あれ?反対?」


「裏を返したら今度は切先からハバキ元の方へ打ち粉をかける。そうだ…横も忘れるな。」


もたもたとしている私を見かねて、斎藤さんは立ち上がって私の後ろに立ち、順序よく細かに指導を始めました。


とにかく一言一句洩らさず聞き取り覚えようと真剣だったため、誰かが近づいてきた事なんて気がつくはずもありません。


「君、また一君の邪魔してるの?」


「えっ?邪魔?邪魔じゃないです!今日は刀の手入れの仕方を教えてもらってるんです。沖田さん、見てわかりませんか?」


「僕には一君の邪魔をしてる風にしか見えない。一君もこんな子によく付き合うね。」


「総司、少し黙れ。指導の途中だ。」


斎藤さんに諌められた沖田さんは黙って私の隣に座り、集中している私の手元をじっと眺め始め…


「ねぇ、集中力が足りないんじゃない?全然関係ないところに打ち粉かけてるけど?」


「もう!沖田さんが邪魔するからじゃないですか!」


悪戯な笑みを浮かべる沖田さんをひと睨みして、私は再び手元に集中する事にしました。


私は沖田さんを【意地悪な人】とか【口が悪い】とは思いませんでした。


彼が紡ぐ言葉を初めて見た時【びいどろ細工のように繊細な人】だと、そう思いました。


「あはははは、君が一君の邪魔してるからだよ。」


たしかに少し口は悪いかもしれないけど…


「だからって私の邪魔をしないでください。」


最初に話かけられた時も、かなり意地悪な言葉をかけてきたけど…


「じゃあ邪魔しないから早く終わらせて。今から一君と剣の稽古するんだから。」


「総司、いい加減に…」


「剣の稽古?何言ってるんですか!熱を出して寝てる人間が剣の稽古だなんて!ちゃんと体調を整えてからにしてください。剣の稽古は元気になればいつでも出来ますよ!」


沖田さんはびいどろ細工のような繊細な感性を持っている人。


それでいて【心が強い人


辛くても強くあるためには努力を惜しまない人。


その強さはきっとたった一人の人のためであり、その剣は守りたいもののためにある。


「おい、千歳。何ごちゃごちゃ騒いでやが…」


「あっ…土方さん。沖田さんが…」


「総司!てめぇは黙って寝てろって言っただろうが!千歳!何悠長に病人と話ししてやがる!今すぐ布団の中に押し込んでこい!斉藤、終わったら頼みてぇ事がある。急がねぇから後で部屋に来い。」


「はっはい!かしこまりました!」


「ちぇっ…またお節介な人が来た。」


「御意。雪村、総司を部屋に連れて行け。戻ったら続きを教える。総司、今のあんたに必要な事は休息だ。体力が戻り次第存分に撃ち合いをしよう。あんたが根をあげるくらいにな。」


土方さんの登場で、場が一気にぴりぴりとした雰囲気になりました。


私は慌てて立ち上がり、部屋を出る沖田さんの背中を追いかけました。


「…千歳ちょっと待て。」


「はい?」


「………」


土方さんに耳打ちされた言葉に黙って頷いて、私は沖田さんの元へと急ぎます。


正直言って…土方さんの第一印象だけはまったく憶えていません。


悪態をつく土方さんを見つけたあの時、私は「とにかく声をかけなくては」と…だたそれだけを考えていました。


話しかける取っ掛かりが欲しくて、でも見つからなくて、誰かに相談しようにも時間がなくて…。


あの時とっさに取った行動が正しかったのか間違っていたのか…それはわかりません。


「ねぇ、土方さんに何言われたの?」


「沖田さんが眠りにつくまで監視してろって言われました。」


「最近寝つきが悪いから、寝付くの待ってたら君が風邪をひくんじゃない?一応女の子なんだから、鼻水垂らして歩き回ってたらみっともないよね。諦めて戻ったら。」


「これは副長命令です。私だって切腹したくないからそんな事聞けません!それなら風邪ひいてしまった方がましです!」


「土方さんに並ぶ頑固者だな。」


「頑固じゃありません。当たり前の事をしているだけです。」


そうですね…今土方さんの印象を聞かれたら【不思議な人】と答えます。


「私がいなくなってから床を抜け出しても、土方さんにはすぐにばれますから無駄ですよ。」


人の事を良く見ていて、特に私の稚拙な考えや行動は全部見通されているのだと、そう思っています。


でも怖くはない。


だから土方さんは【不思議な人】なんです(笑)












これは


撃剣師範 斉藤一


撃剣師範 沖田総司


そして


新選組副長 土方歳三


御三方に対して私が感じた事です。


あなたの目には、彼らはどういう風に映るのでしょうね?












えっ?


土方さんに耳打ちされた事ですか?


他に何か大事な事を言われたんじゃないか…ですか?


えっと


…沖田さんには絶対に秘密ですよ。


『近藤さんがお前にと美味い菓子を買ってきた。後で近藤さんに茶を持っていってくれ。煩せぇから総司には内緒にしとけ。』