みなさん こんにちは
いうまでもないことですが、株式会社は株主の出資から成っており、経営者は
その意向を最大限に尊重し、経営に当たらなければなりません。
以前の株主総会といえば、シャンシャンで終わることも多かったですが、経営
に対する株主の目は厳しくなる一方で、経営者が会社に損害を与えるようなこ
とがあれば「株主代表訴訟」が提起され、場合によっては経営陣のクビが飛ぶ
こともあります。
話は変わりますが、高支持率を維持している安倍政権のもとの教育再生実行
会議が現状の教育委員会制度を抜本的に改革し、自治体の首長(知事や市町
村長)が議会の同意を得たうえで教育長を直接任命や罷免できるようにすると
いう提言をまとめました。
住民から選挙される首長が教育施策を打ち出しても、教育委員会が必ずしも
それに沿った動きをしない場合があるとか、いじめ問題にしても教育委員会は
対応が鈍いといったことが改革の背景にあるようです。
これらに迅速に対処するには、教育行政の権限と責任を教育長に集中させる
のが妥当という考えです。
それはそれで結構ですが、実行会議の皆さん方は地方の教育行政の実態を
どの程度理解して提言されたのか、疑問な点がいくつかあり、今回の提言に
異論を唱えている人にも私なりの意見があります。
私は、札幌市の教育委員会で事務方を通算5年経験しました。
現場では、教育行政に関して、教育長に権限と責任がかなり集中しています。
【首長が教育長を直接任命あるいは罷免できるようにすることについて】
法律上は、教育委員長は教育委員の互選で、教育長も教育委員の中から選
ばれることになっています。首長に教育長の任免権がないとのことですが、現
実は、首長が教育長候補者を内定し、それを教育委員会が追認する形がほと
んどです。
教育委員も教育長も、首長が選び、議会の同意を得て任命していて、そこには
首長の強い意向が働いているわけです。議会もよほどのことがない限り、反対
はしません(これも問題がありますが)。
【教育長の権限を強くすると、教科書採択などに首長の意向が反映され、教育
の政治的中立性が侵されるとの懸念について】
現在でも、教育長や教育委員が政治家でもある首長から選ばれるものである
以上、いくら「教育の中立性」を唱えたところで大した意味はありません。
橋本徹氏が大阪府知事であるときに、「くそ教育委員会」とコキおろし、「言うこ
との聞かない教育委員はクビをすげ替える」と豪語したではありませんか。
教科書採択で政治的中立をどうこういうのはおかしいです。
首長の問題ではありません。
教科書検定の実権を握る文部科学省が、偏向した内容のものがあれば排除
すればいいだけのことですよ。
【教育に関して識見のある者が教育委員や教育長として任命されているか】
法律は、教育委員そしてその中から選ばれる教育長は、教育に関して識見を
有する者でなければならないとしています。
これを今回の提言ではどうするのか分かりませんが、現実には教育現場を全
く経験したことのないような人物が首長によって教育長に選任されている実態
があります。
教育長を教育行政の最高責任者にするなら、いじめ問題や道徳教育の充実
といったことについて、しっかり対応できる人物が選ばれるような担保が必要
です。
【教育委員会には予算の執行権限もない】
現在の地方自治法と地教行法(地方教育行政の組織及び運営に関する法律)
では、教育委員会には予算の執行権限はありません。
首長が選挙で「少人数学級の実現」を公約で打ち出したとします。
それを実行に移すとなると教員等の増員とお金が必要になりますが、首長が
「予算は私が付ける。執行は教育長あなただ」で本当にいいんですかね?
【教育委員の選任等に関する議会の関与】
提言では、権限の強い教育長の任命も議会の同意が必要としています。
ただ、現状でも、首長が提案した人事が不同意となることはほとんどありま
せん。
ですが、議会の同意は決して形式的なものではないはずです。
住民の代表である議会が教育長や教育委員の選任、教育行政の執行について、
政治的思惑を超えたグリップを利かせることができるかどうか、も教育再生の
カギだと思っています。