中学時代に、優秀な成績で高校に進学した生徒がいます。


高校に入ると勉強の内容も難しくなり、科目も多くなります。中間テストでは今までにないような悲惨な点数をとり、プライドはズタズタ、とたんに劣等生になったようです。


それはそうでしょう。


高校では自分と学力が同程度の友人がたくさんいて、またそれ以上の優秀な生徒も無数にいます。


これまでの自分のやり方や熱意、やる気の程度ではとても追いつかないことに気づきます。


クラスでの順位はびりに近い位置にいて、今まで中学校で優等生だったことがウソのようです。


私はこのような生徒をとても微笑ましい気持ちで見ています。


まだそれでも何とか努力をしようとし、劣等生の自分を笑える心境にあるからです。


いったんはこのような場所をくぐり抜け、努力の継続と蓄積で乗り越えて欲しいのです。


自分のこれまでの勉強のやり方や甘さを反省し、そこから次の成功のために知恵を学び取り、そして同時に、成績が悪くて劣等感を抱く友人の気持ちをも理解できるようになります。


この生徒は、一度劣等生に叩き落されることで、非常に多くのことを学んでいるのです。


次に成功していくための知恵と、他人の気持ちが理解できるようになるという愛を同時に学んでいるともいえます。


人間が幸せに生きていくためには、この知と愛を学ぶことは非常に重要で、それには失敗の経験や挫折の経験、下に落ちたり落とされたりする経験が必須なのです。


知と愛をつなぐもの。


高校生活のわずかな出来事や経験の中でも、そのような学びの機会は無数にあるものです。


せっかく劣等生になったのですから、この機会を最大限に生かして、さらに大きな人間的成長を手に入れて欲しいと、心からそう思います。