この時期、卒業式があちこちの学校で行なわれています。
多くの先生方や友人との別れ、新しい世界に飛び立つ期待や不安。
自分自身の卒業式を振り返ってみると、その日以来、もう一度も会うことのない人も数多くいるものです。
幼稚園から始まり大学に至るまで、たくさんの卒業式を経験してきましたが、やはり人生の節目節目には一定のけじめやそれを象徴する式典は大切なものであると感じます。
私はしかし、自分自身の卒業式よりも、自分が教師として経験した卒業式の方が、はるかに印象に残っています。
入学したての学生と、卒業して社会人となって巣立っていく学生たちをたくさん見てきて、入学時と卒業時の変化に感動を感じずにはおれないのです。
専門学校で教師をしていた時は、学生との距離が非常に近く、毎日学生の様子を見ていたためか、おそらくは普通の学校の何倍も学生たちの変化や成長を身近に感じることができました。
「人は変わるのだな」という面と「人はなかなか変わらないのだな」という両面をいつも見ていて、それを感じ取っていたように思います。
就職や自分の夢、目標に向かって必死で勉強する学生たちを見ていて、もうこれで自分も倒れてもいい、という思いで毎日朝早くから夜遅くまでその勉強につきあっていました。
学生の就職試験時には私の仕事の時間はいつも15時間を軽く超えていましたが、それは命じられてやっていたわけではなく、学生の頑張りに、ただ身を預けていただけだったように思います。
自分が卒業していくことの思い出よりも、多くの教え子が卒業していくことを印象深い思い出として生きていくことができる教育の仕事は、それだけでとても幸せなものであると思えるのです。
卒業という門をくぐり抜けた生徒、学生たちには、その区切りの時に感じた尊い気持ちを、決して忘れることなく、まだ見ぬ未来を生きて欲しいと思います。