「22世紀を見る君たちへ」 平田オリザ 著 講談社現代新書 | 地方創生のよもやま

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劇団の主催者、劇作家、大学での教育者等の会を持つ著者が、現在進行中の大学入試改革を題材に、教育についての考えをまとめた1冊
著者がかかわった大学入試や採用試験の課題がいろいろ紹介されていて、今進んでいる改革の方向性が具体的にイメージでき興味深い。

 

 


文科省が考える新しい学力の中核が「主体性・多様性・協調性」
必要とされる人材を育成し、大学の国際競争力を高めるにはあるべき方向性ではあるものの、これらの資質は努力とは無関係の生活環境により育まれる部分が大きいことから

 

「努力とは無関係の身体的文化資本を問うことになり、より格差が鮮明になってしまう」(P97)

 

と、経済格差、地域格差が広がってしまうのではという問題提起している。


この点に関し、著者がかかわる豊岡市では
・パフォーミングアーツに特化したアーティスト・イン・レジデンスの場である城崎国際アートセンターで、最先端のアートを無料で見られるといった文化的環境
・演劇ワークショップを活用するなど、将来を見据えた高水準の教育を実現する教育改革
といった取り組みでソフトパワーを前面に出してI・Jターンを呼び込んでいるとのこと


  「これまで多くの自治体は、U・I・Jターン者が「来る理由」ばかりを考えていた。(中略)本来自治体は「来ない理由」に着目しなければならなかった。来ない理由は「医療、教育、文化」に対する不安である。」(P201~201) 


 地域として教育・文化の充実にきちんと取り組むかどうかで、その地域が住む場所として選ばれるかどうかという格差、それから、その地域で生まれ育った人が送る人生の上での格差はますます広がるのだろう。
  しかしながら、教育や文化における取組は、 地域全体を巻き込んだ息の長い取り組みが必要であり、地方創生の交付金でちょっと事業を仕込めば成果が見えるようなものではない。
 第2期の地方創生総合戦略もほぼ出そろっているはずだが、地域の戦略としてきちんと絵を描き、取り組むことが求められる。