観に行ってきました。
久しぶりに一人での映画館。
娘ちゃんが生まれてから、子供と一緒に観られる映画しか観に行っていなかったけれど。
やっぱり一人で行く映画館は、じっくり入り込めて好き。
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平日昼間にも関わらずほぼ満席でした(ソーシャルディスタンスで隣席はあけられていますが)。
今回、バレエが題材の映画なので、娘ちゃんも連れて行くべきかずっと悩んでいたんですよ。
PG指定もR指定もされていなかったので、いけるのかな~…って思って。
けれど、草彅くんがトランスジェンダー役だし、映画のイントロダクションをみると最初に歌舞伎町のショーパブの場面からスタートするって書いてあったので、とりあえずアタシが観てみて判断しよう…って思ったのですが。
これ、R15位の指定しないとまずいでしょ(笑)
実際、舞台挨拶で草彅くんがR指定を受けなかったのに驚いたって言うてたそうです。
トランスジェンダーがどうのこうのっていうより、後半に大人でも目をそらしたくなるようなグロイ場面とかあるし、ちょっと説明が難しいような内容もあるので。
これを指定掛けないとか、映倫の基準がわからん。
もしも子供さんと観に行く予定をされている方はそのことを念頭に入れた上でご判断ください。
↓世界一長い予告(15分以上ある)
この予告観ているだけでも泣きそうになるけれど、実際はもっともっと過酷で切ないストーリー。
観終わった後、なんともいたたまれない心の奥に残る作品になりました。
この衝撃は、『八日目の蝉』以来。
八日目の蝉も観終わった後にすごく苦しかった。
苦しすぎて、原作を読んでやっと消化したのを思い出しました。
そんな八日目の蝉は、あの年の日本アカデミー賞10冠とりましたね。
ミッドナイトスワンも、そんなふうになってもおかしくないような内容だと思います。
以下ネタバレ考察。
映画を観られていない方はここでやめていただいたほうがいいです。
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あらすじ。
舞台は歌舞伎町。
トランスジェンダーである凪沙が、ネグレクトにあっていた遠縁の中学生一果(東広島育ち)を短期間面倒を見ることになることからスタートです。
子供嫌いの凪沙と感情を表に出せない一果は、最初全くわかり合おうとも向き合おうともせず共同生活をすることになるのですが、バレエをやりたいがためにバレエ教室で知り合ったりんに誘われて怪しいバイトを始めます。
ところが一果はそのバイト先で問題を起こし、バイトやバレエのことが凪沙にバレてしまいます…
どうにかなってしまいそうな一果を一人にしておくわけにもいかず、凪沙は自身の職場であるショーパブへ一果を連れていくのですが、舞台で白鳥の湖のパロディのようなダンスを踊る凪沙に飛んだ野次のせいでお店の中が大混乱した時に、ショーパブの舞台へ立ち踊る一果をみて凪沙に感情の変化が起こっていきます。
一果のバレエの才能を埋もれさせてはいけない、自分が守らなければいけないというように思い、お金を稼ぐために男娼として働こうとしたり、髪を切り昼間の仕事を始めたりしますがどれもうまくいきません。
一方、一果はバレエに熱中していますが、親友のりんが足の怪我でバレエを続けられなくなりました。
りんはお金持ちの家に生まれていますが、お金だけを与えられ、愛人を二人持ち子供のことなど見向きもしない父や、自分のバレエにしか興味のない母に対して憤りを感じていて、孤独感を持つ少女。
りんは一果の才能を疎んだりもしますが、それ以上に一果との友情・愛情を感じ、一果と深いところでつながるようになっていきます。
コンクール当日、一果が踊る前にりんから電話があり、『頑張ってね、さよなら』と言われた一果。
一果が舞台でアレルキナーダを踊るのとリンクするように、りんは両親と行っていたビルの屋上で開催されていた結婚パーティーで、アレルキナーダを踊りながらビルから飛び降りてしまいます。
そうとも知らない一果は、2つ目にオデットを踊る時、舞台から客席にりんがいるような錯覚を見て踊れなくなってしまいます。
舞台に立ち竦む一果を、実の母・さおりが飛び出して一果を抱きしめたことで、このままでは自分は母にはなれないと感じ、凪沙はタイへ…
ずっと踏ん切りがつかなかった性転換手術を受け、女性になり、母になることを決断しました。
一果は東広島へ戻り、ふてくされた生活をしていたところへ女性の体になった凪沙が迎えに来ます。
女性になったことを悲しみ泣き叫ぶ凪沙の母や、モンスターと罵るさおりを前に、一果に『踊らなきゃだめ、戻りましょう』と語りかける凪沙。
乱闘になりかけた時、凪沙の服が破れて女性化した胸が顕になり、家族中が大混乱になり、結果凪沙は一果を連れ戻すことが出来ませんでした。
時が経ち、一果は中学卒業と同時にイギリスのバレエ学校への入学許可とスカラを得て渡英することが決まります。
卒業したら凪沙に会いに行くと決めていた一果は、東京へ。
そこで、変わり果てた凪沙に会うことになります。
今にも意識が飛びそうな凪沙を連れ、凪沙の希望で海へ行くことになった二人。
浜辺で踊る一果を見ながら、凪沙は息を引き取ります。
その後、一果は背筋を伸ばして凪沙のようなトレンチと赤いヒールを履いてぴしっと歩いてNYのバレエコンクールへ。
そこでオデットを踊って未来へ向けていく…というところで映画は終わりました。
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まず一番は、バレエシーンがとにかく素晴らしい。
一果の成長があまりにも急激で、こんなにすぐに上手くなる訳無いやん!って突っ込まざるを得ませんが、そこはとりあえず割愛。
女性は聞かないけれど、男性の場合は遅くに始めたっていってそこからトップに上り詰めた人とか結構話を聞くので無いことはないと思っておきます(熊川哲也さんも10歳くらいから始めてる)。
公園で凪沙と踊るオデットとか可愛くてすごく好き。コンクールでの踊りもどれも重力なんてこの世にないような、軽やかでキレイだった。
服部樹咲ちゃんは、今回バレエができる子というの限定でのオーディションで役を勝ち取った新人の子ですが、新人らしからぬ空気で本作の質を高めた人だと思います。
↑小学校低学年の頃の樹咲ちゃん。
0:28位でローズアダージオやってる子。
そして、トランスジェンダーとして決して美人ではない草彅くんが、草彅剛が演じる凪沙ではなく凪沙そのものにしか見えなくなるあの演技力がすごい。
性転換手術もかなりギリギリまで映像にしたり、その後のケアを怠り感染症を起こして寝たきりになったところも彼にやらすとか、監督は鬼畜…
実の母・さおり役の水川あさみさんも、まったく水川あさみさんにみえなくて驚かされました。
場末のホステス感がすごかった。
彼女は暴力を奮ったりきつい言葉を一果に投げつけたりしてしまう駄目親だったけれど、彼女なりに愛情を持って一果を育てていました。
それがコンクールで立ちすくんだ一果を救ったのも事実ですもんね。
ショーパブメンバーも、田口トモロヲママも良いけど、みずき役をやった田中俊介くんがめちゃくちゃ良かった。
警察に、野口健太郎さん(本名)ですね?と言われても、頑なに野口みずきですと言い続けた彼の演技が良かったです。
そしてなによりりんの存在。
彼女を誰にするかは相当悩ませたようで、結果19歳の上野鈴華さんに決まったのですが、中学生役でもそれほど違和感なく、一果ほどではないけれど言葉が多い役でもなかったのにその感情をすっごくうまく演じられていました。
りんの存在は、この作品に深みを持たすのに必要だったのだろうけれど、彼女はいつでも微笑んでいてあまり表にその悲しみを出さない分、結末が悲しすぎて凪沙以上に後引いてます…
唯一の癒やしだった真飛聖さん演じるバレエの先生。
最もまともな感覚で、最も精神的に安定した役でホントに癒やしでした。
賞状やトロフィーが立ち並ぶ名門のバレエ教室っぽかったのに、結構古臭く感じたけれど(笑)
スタヂオって書かれてたり、板の床だったり。
でも、先生が凪沙のことを思わずおかあさんって呼んでしまったときの微笑ましい感じはこの作品の一番の癒やしポイントです。見逃せない!
本作は、白鳥の湖にストーリーをなぞっているところがあって、凪沙=オデット、ジークフリート=一果のイメージなんだという考察があちこちに飛び交ってますね。
それ以外にも、赤い靴が結構象徴的に描かれていて、最後に一果は赤いヒールを履いてコンクール会場へ行くのですが、踊りだしてからの一果は赤いスニーカーをずっと履いてるんですよね。
ずっと踊り続けなければいけないという魔法にかかったという意味でも、赤い靴の話もなぞっているんだろうなぁ。
あと、アレルキナーダを使ったのも意味があるんだろうけれど、アタシはあのVa.の振り大好きなので結構ショックだった…
チュチュをパンパンって叩いたり、指でシーっというポーズをしたりするのがめちゃくちゃかわいいんですよ。
あれをりんの最後に使うとか、今後アレルキナーダのVa.見る時に変な印象が残っちゃう…
アレルキナーダは全幕ではほぼ消失した舞台なので、Va.やグラン・パ・ド・ドゥではよく見るけれど、全幕で見ることは現在ほぼ無いです。
ストーリー自体が本当はどうなのかがわからなくなってるんですよ。
最近ちょいちょいプティパ作品のアレルキナーダは世界で見ることが出来てますが…
一般的に踊られているこのVa.は、フェアリードールというお話の中のお人形たちが夜に踊りだす踊りだという説もあれば、プティパ作品のように最近の解釈でコロンビーヌがアレルキンとするかわいい恋の駆け引きの踊りだという解釈で舞台が作られていたりもするので、ホントはどうなんでしょうね?
踊るときは結構お人形っぽくかわいらしく…と指導されることが多いみたいですけど。
古くから踊られているバレエは、映像として残す技術がなかった時代のものは消え去ってしまったものが多いです。今は映像として残せるから、バレエを伝承するという意味でもいい時代ですよね。
アタシが消化不良を感じている理由の一番は、映画という制限された時間内に、どうしてそうなった!とか、細かい心象の変化などの描写の物足りなさを感じたことが一番大きかったりします。
だからそれを消化するために原作は絶対に読んだほうがいいんだろうな。
観てからずっともやもやしたものがあって、ついついミッドナイトスワンでググってしまうのですが、小説で補完される部分がかなり多いらしいのでとりあえず注文しました。
早く読みたいと思います。
久しぶりに映画の感想で長文書いたな。
独身時代は週1~2位映画館に通ってて、地元の情報メルマガで映画感想のコーナーをもたせていただいていて書いていたんですよ。
懐かしい。
それにしても、バレエが題材の映像作品ってなんで暗くなりがちなんだろ。
ここ数年に観たバレエ作品、いい意味でも悪い意味でも全部あとに残るのばっかりだ。
どうせなら、絢爛たるグランドセーヌとか、ダンスダンスダンスールを映像化してください(笑)
こっちなら明るい作品ができるわ。
配役難しそうだけど。
ミッドナイトスワン