腸閉塞 | 扶氏医戒之略 chirurgo mizutani

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身近で関心は高いのに複雑・難解と思われがちな日本の医療、ここでは、医療制度・外科的治療などを含め、わかりやすく解説するブログです。

絞扼性イレウス
絞扼性イレウスは、突然激烈な腹痛ショック症状に陥ることもある危険な腸閉塞である。

腸閉塞(イレウス)とは
腸閉塞は何らかの原因で、腸の中で通過障害が起こる病気である。腸液、ガス、糞便等の内容物が腸の内部に充満して、便やガスが出なくなり、腹痛、嘔吐、腹部膨満等の症状が見られ、急激な悪化では、発熱、頻脈、衰弱、意識混濁等、重い全身症状を起こすこともある。
早期に適切な治療が必要な命に関わる病気である。
腸閉塞は大別すると3つの病態がある。
【機械的イレウス】腸管が器質的な病変で腸管内腔に狭窄や閉塞を起こす。主な原因は開腹手術後や腸管の炎症で起こる癒着、ポリープやがん等の腫瘍や腸の炎症性病変による狭窄、釦等の異物の誤飲や、大量の不消化性食物の摂取等である。
【絞扼性イレウス】緊急手術が必要になる場合がある。腸管内容の通過障害に加え、腸間膜という膜の中の血管によって栄養を受けている部分が絞めつけられ、これで腸管は壊死し、突然激烈な腹痛からショック症状に陥る。
絞扼性イレウスには、炎症による索状物、腸管と腸間膜の捻転、腸管の結束形成、ヘルニア嵌頓、腸重積症等がある。
【機能的イレウス】腸管を支配する神経の障害で腸管に運動障害が起こり、腸管の内容物が停滞する。原因には腹膜炎による炎症が腸管へ及ぶ、開腹手術後の腸管麻痺、薬物中毒や精神的な影響によるものがある。
新生児や乳児で注意したのは、先天以上や胎便、腸捻転による腸閉塞等の症状である。
また成人の十二指腸閉塞は、膵臓がんや潰瘍、過去の手術、クローン病等による瘢痕や癒着等がある。
どの種類の腸閉塞であるかの診断は専門医の診察を受ける必要がある。診察では腹部エックス線撮影のほか、超音波検査等を行う。
手術では狭窄部位の切除や拡張が行われる。小腸が著しく短くなるあと、栄養の消化吸収が低下する短腸症候群が引き起こされるため、できるだけ腸管を温存する小範囲切除が行われる。

・小腸の小範囲切除術…主病変部のみを対象とした小範囲切除術。腸が切除されないので、腸が短くなり栄養障害をきたす可能性がとても少なくなる。
これまで難しいとされてきた、小腸に多数の狭窄がある場合には、この方法は極めて有効である。
・ハイネッケ-ミクリッツ法…狭窄部→切開して広げる→閉じる。
・フィニー法…狭窄部→狭窄部の左右をつなぎ合わせる。
・ジャブレー法…狭窄部→狭窄部の左右を切開し、吻合する。
・順蠕動側々吻合による狭窄部形成術…狭窄部を切開する→腸を上下に重ね合わる。

・危険な腸閉塞・絞扼性イレウスの状態…絞扼性イレウスは緊急手術が必要となる。
①炎症による、索状物による絞扼。
②腸管と腸間膜の捻転による、小腸捻転性絞扼イレウス。
③腸管が紐を結んだ状態で結束する、小腸係蹄の結節形成。
④腸などの内臓の一部が腹壁の弱い部分から飛び出し絞扼される嵌頓ヘルニア。
⑤腸管の肛門側に口側腸管が入り込んだままの状態となる腸重積症。

※人が経口摂取で栄養を吸収し、生命を維持するのに必要な小腸は、小児では30cm、成人では50cm以上。手術で小腸が極端に短くなると静脈栄養が必要になる。
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