迷走神経切除術 | 扶氏医戒之略 chirurgo mizutani

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身近で関心は高いのに複雑・難解と思われがちな日本の医療、ここでは、医療制度・外科的治療などを含め、わかりやすく解説するブログです。

迷走神経とは
迷走神経は、12対ある脳神経のうちのひとつで、第10脳神経とも呼ばれる。脳幹から出て、腹部まで達しており、体の中でも最も重要な神経である。頸から横行結腸の1/3までの広い犯意に働く副交感神経で、生命活動に欠かせない基本的営みを調整している。
副交感神経は自律神経系のひとつで、交感神経と対立する働きを持ち、生体内のホルモンなどを制御する。副交感神経が優位になっているときは、リラックスした状態で、胃液や唾液の分泌が高まり、血管が拡張し、手や足は温かい。
また、迷走神経には、内臓の感覚を脳に伝える働きと、喉を動かして声を出す働きもある。
・迷走神経が支配する器官…迷走神経は、外耳の感覚や発声に関わる筋肉の運動、胸・腹部の臓器ぜんぱんの働きを支配する。

迷走神経切除術
胃ガン等の疾患による胃切除術と同時に行われることが多いのが迷走神経の切除術である。
①【全幹迷走神経切除術】腹部食道の位置で前幹、後幹を切除する。腹部食道の外側に走っている細い迷走神経も切除する。
術後に下痢や胆石症の発生率が高くなる。胃内容停滞に起こるので、幽門形成術等のドレナージ手術(膿瘍や腹水を抜く方法)が必要である。
②【選択的迷走神経切除術】胃枝だけ切除し、肝枝、幽門枝、腹腔枝は温存する。術後に下痢や胆石症の発生率は低くなるが、胃容停滞が起こるので、幽門形成術等のドレナージ手術が必要である。
③【選択的近位迷走神経切除術】胃体部だけを切除し、肝枝、幽門枝、腹腔枝、前後幽門洞枝は温存する。
術後に下痢や胆石症の発生率は低く、また幽門形成術等のドレナージ手術は必要ない。
①食道の位置で前幹、後幹を切除。腹部食道の外側の細い迷走神経も合わせて切除。
②胃枝だけ切除。肝枝、幽門枝、腹腔枝は温存。
③胃体部枝(胃の壁細胞に分布)のみ切除。肝枝、幽門枝、腹腔枝、前後幽門洞枝は温存。

※胃切除術は黒色石での胆石症の要因になっているが、他に高齢、溶血性貧血、肝硬変、心臓弁置換術後等の疾病が危険因子とされている。
※胆嚢の胆石が激しい痛みを繰り返す場合は胆嚢摘出術を行う。胆嚢摘出術の約90%は腹腔鏡手術で、腹壁を小さく切開してチューブを挿入し、胆嚢を取り出す。
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