日本の薬価格は高いか低いか | 扶氏医戒之略 chirurgo mizutani

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身近で関心は高いのに複雑・難解と思われがちな日本の医療、ここでは、医療制度・外科的治療などを含め、わかりやすく解説するブログです。

薬は国際市場で流通していますので、本来は統一的な価格で取引され、その価格も薬による生活の質(QOL)の改善を経済学的な観点から評価して決めるべきでしょう。しかし、各国の産業政策や医療制度によって、価格に差があります。政策上の問題は、ある特定の薬の価格を比べることはできても、全体としての薬の価格を国際比較するのは困難なことです。
その理由は、第1に国によって処方される薬の種類や構成比が違い、特に日本では他の国で市販されていない薬の構成比が高いので、全体として薬価が高いか、低いかの結論を出すことは難しいのです。
第2に、1日に通常処方される量に換算して価格を比較すると、日本の通常処方量は諸外国と比べて一般的に少ないので、価格は相対的に高くなります。というのは、例えば日本で多用される10mg錠の価格は、欧米で多用される20mg錠の価格の半分よりも高いからです。
第3に、為替レートで価格を比較するのが一般的ですが、日本は為替レートと購買力平価レートの乖離が大きいので、為替レートでは割高な印象が持たれます。
このうち、第一の問題については、日本で処方されている実態に対応させて全体の価格を国際比較したダンゾンの研究によると、1992年時点では日本はアメリカよりも低く、ドイツ、フランスよりも高いという結果でしたが、1999年のアメリカで処方されている薬を基準においた調査では、日本が最も高い結果となっていました。
ところで、内外格差は薬ではなく、ペースメーカーなどの医療機器において最初の問題になりました。検討の結果、これらの機器、機材の公定価格を決めるうえで、米、英、独、仏における価格が参照され、これら4カ国の平均価格の1.5倍以下になるように改められ、価格も下がりました。
上記のルールを薬についても導入したところ、逆にアメリカにおける高い価格に引っ張られて、新薬の薬価が高く設定されるようになりました。こうした傾向は他の国においてもみられ、そのため製薬メーカーは、まずアメリカで販売することがあります。
以上のように日本の薬価は高いか低いかの結論を肝胆に出すことはできませんが、日本のように薬価格を統制している国では新薬が初めて市場に出た時の価格は抑制され、特許期間中も下がりますが、切れた後もある程度維持されます。これに対して、アメリカのように規制していない国では、特許が切れるまで高い価格が維持されますが、切れた時点で急速に下がります。
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