甲状腺の解剖と甲状腺切除術 | 扶氏医戒之略 chirurgo mizutani

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身近で関心は高いのに複雑・難解と思われがちな日本の医療、ここでは、医療制度・外科的治療などを含め、わかりやすく解説するブログです。

甲状腺のしくみと働き
甲状腺はのどぼとけのすぐ下、気管の前にあり、蝶が羽を広げたような形をした黄褐色の臓器である。
通常は柔らかく外から触っても確認できないが、何らかの病気がある場合は確認できることが多い。
甲状腺は甲状腺ホルモンを合成、分泌する内分泌臓器で、その材料は食物中のヨードである。また甲状腺ホルモンには体内のヨードの半分以上が含まれ、肝臓とともにヨードの代謝に重要な臓器でもある。
甲状腺ホルモンにはトリヨードサイロニン(トリヨードチロニン、3個のヨードを含むT3とサイロキシン(チロキシン、4個のヨード含むT4)があり、トリヨードサイロニンはサイロキシンの5-8倍の強い働きは発育や成長、脳、心臓、消化管、筋肉、皮膚など全身の新陳代謝の促進、精神神経や身体の活動の調整などである。また別にカルシトニンというホルモンも分泌している。これは骨にカルシウムを蓄え、骨の形成を促している。

甲状腺切除術とは
【バセドウ病】甲状腺ホルモンを正常な量にコントロールする治療が行われる。そのひとつに甲状腺亜全摘術がある。若年者から中年者で薬の副作用がある。甲状腺腫が大きい、甲状腺腫瘍を合併している、早期に寛解を希望する場合に適用される。手術は入院が必要になる。
【甲状腺がん】治療の基本は甲状腺切除術である。従来はがんのみを摘出する手術が主流であったが、それでは再発率が高いという理由で、現在は甲状腺を全部取る、甲状腺全摘を行うことが多い。またリンパ節への再発転移を予防するために、甲状腺全摘に加え甲状腺周辺のリンパ節も切除する。甲状腺がんのうち、乳頭がん、濾胞がん、髄樣がんはがんが取り切れると治癒率が高い。乳頭がんは術後20年で約95%の人が無再発という報告がある。切除術で甲状腺に接している気管や食道に触れるため、術後にものを飲み込む際に痛むがやがて治まる。がんが声帯を動かす働きをする反回神経に癒着していた場合は、術後に声がかすれる後遺症が出ることもある。術後は触診、超音波検査、胸部エックス線写真などで定期的な再発チェックが必要となる。また甲状腺ホルモンを補充する必要があるため、ホルモン製剤を一生飲み続ける必要がある。

甲状腺の構造
甲状腺はのどの下にある甲状腺ホルモンを合成、分泌する器官で、その中には副甲状腺が含まれている。

甲状腺摘出術の手順
首の前、鎖骨の1cmほど上の位置を6-16cm程度の長さにわたって切開し、甲状腺を摘出する。切開する幅はリンパ節の切除範囲によって変わる。甲状腺は切除されるが、副甲状腺は温存される。手術中、副甲状腺が甲状腺と一緒に取れた場合は筋肉に移植される。
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