ミサ・ブレヴィス ト長調 K.49(47d) | 扶氏医戒之略 chirurgo mizutani

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ミサ・ブレヴィス ト長調 K.49(47d)

作曲:1768年10月から11月,ヴィーン。
出版:新全集Ⅰ-1-1/1
編成:独唱4部,4部合唱,ヴァイオリン 2部,ヴィオラ,トロンボーン 3,バス,オルガン
演奏時間:約20分
解説
モーツァルトのミサ曲の大部分を占める「ミサ・ヴレヴィス」(短いミサの意。略式ミサともいう。)の第一作。1767年末から1769年初頭にかけてのヴィーン滞在中に書かれたもとされる。最近邦訳の出たカルル・ド・ニの「モーツァルトの宗教音楽」(Carl de Nys,La musique religieuse de Mozart 1981)では、ヴィーンの孤児院教会院長 パルハーマー師(Ignaz Pargamer 1715-86)の仲介により、同じくヴィーンにあるウルスラ会女子修道院からの依頼に応じたものと断定しているが、この成立の経緯については今日なお結論づけられていない模様である。
いずれにせよこのミサ・ヴレヴィスは、一連の孤児院教会のための作品、K.139(47a),K.117(66a=47b),K.47とともに、弱冠12歳の少年が当時の教会で求められていた典礼に従う音楽のさまざまなあり様をすでに学びとり、かつそこに個性の彩を映し出す術を心得ていたことの例証とされよう。とりわけ全5章60行に及ぶミサ典文を、ほとんど同期に平行してヴレヴィス、ソレムニス(盛儀ミサの意。同然長い。K.139(47a)が該当する。)の両用に書き分ける作業を果たしていることには驚きを禁じ得ない。
このミサ曲の大きな特徴として、エーベルリン(Johann Ernst Eberlin 1702-62)や部分的には父レーオポルトに負うた全体の構成法、オーケストラの控え目な用法に加え、4度上昇を核としたモティーフを各章の主要旋律に配し、全曲に統一的な印象を与えていること(アーベルト)も挙げられる。[以下、各楽章の調性は、曲タイトルの表記と異なる部分だけ示し、同じ場合は省略した。]
Ⅰ.キリエ アダージョ 短い序唱から主部アンダンテに入る。歌詞の3行に対応した三部形式はとらず、また<キリエ>と<クリステ>の音楽的対照も図られていない。通例のミサ開曲と異なり、ここでは明るくのどかな音調が支配している。
Ⅱ.グローリア アレグロ 合唱と独唱4部が交替する。ミサ・ブレヴィスの常套手段である<重歌詞構造 poly-texture>は避けられているものの、独唱部を含め一切の歌詞の反復を退けた進行はいささか慌ただしい。ここでは例外的にオーケストラを細かく華やかに動かせることにより18行の歌詞を持つ楽章全体をまとめている。なかで<ミゼレーレ>のニ短調のかげりが巧みなアクセントづけになっている。
Ⅲ.グレード 30行の歌詞が6部に分けられる。
(1)パトレム・オムニポテントゥム アレグロ 合唱と独唱4部。ホモフォニーが主体の進行告白。<デシェンディト>の語では執拗に下降音型が繰り返される。
(2)エト・インカルナートゥ ハ長調 ポコ・アダージョ 半音進行をきわ立たせて「受肉」の意義を強調する。全曲の精華を成す部分。
(3)エト・レズレクシト アレグロ 前節と対照的に晴れやかな「復活」の歌。しかし<モルトゥオールム>の句ではアダージョに急転、緊張した減7和音を響かせるという工夫も凝らされてある。
(4)エト・イン・スピリトゥム ハ長調 アンダンテ 珍しくバス独唱の形をとる。神の声をバスに託すのはバロック以来の慣習に根ざす。先出のド・ニによると、ウルスラ会修道院に在籍していた無類に美しいバスの声をもった修道女のために書かれたという。
(5)エト・ウーナム・サンクタム アレグロ 冒頭にアーベルのいう4度上昇がはっきりきかれる。続く終結部への推移を果す。
(6)エト・ヴィタム・ヴェントゥーリ Ⅱの終結の<クム・サンクト>と同じく伝統に即して対位法様式で貫かれている。バッハの「平均律」の冒頭フーガを思わせる主題は例のごとく4度上昇に始まるが、その堅固な構えはミサ・ブレヴィスにしては破格の規模大きなこの楽章をしめくくるにふさわしい。
Ⅳ.サンクトゥス アンダンテ ヴァイオリンの細かいリズムに支えられて<サンクトゥス>を力強く反復ののち、<オザンナ>の軽やかな模倣が導入案される。続く<ベネディクトゥス>は同じくアンダンテながらハ長調に転じ、独唱4部が三連符を優しく織り込みながら祝福を歌う。<オザンナ>の再現。
V.アニュス・デイ ホ短調 アダージョ フォルテとピアノが交替する暗い序唱風な部分からアレグロ、ト長調に変わり、<ドナ・ノービス>がスタカートや16音符も交えた軽やかな曲調で歌われ、全曲を結ぶ。
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