『シリーズ 特定失踪者問題を考える』
~拉致から37年、闘いは続く~ 藤田隆司
2013年 2月 22日
兄・藤田進 拉致から37年
横田めぐみさんや田口八重子さんが拉致される約2年前の昭和51年2月7日、当時19歳だった私の兄・藤田進は川口の自宅を出た後、忽然と姿を消してしまいました。それ以来、家に戻って来なくなってから、今年で丸37年になります。兄は今、56歳。大学1年生で体育教師を夢見ていた兄の失踪の真実が明らかになったのは、失踪28年後の平成16年夏の事です。脱北者が北朝鮮から持ち出した写真に写る人物がなんと、兄・藤田進本人そのものだったのです。衝撃的な事実が28年後に、初めて明らかになったのです。(その後、写真以外にも北朝鮮での目撃証言や実行犯の生々しい告白も・・。)この決定的な写真が、北朝鮮による拉致の証拠であり、兄が北朝鮮で生きていた証です。
国連受理から半年
去年(平成24年)の7月、私はジュネーブ(国連・強制的失踪作業部会)で兄の件と特定失踪者全般について陳述してきました。そのわずか1ヶ月後の8月15日、国連は兄の失踪案件を正式に受理してくれ、北朝鮮に書簡が送付されました。その書簡の内容は「藤田進の人権を守るため、その居場所と安否を明らかにする事」を北朝鮮に求めたものです。この国連からの知らせは、家族にとってとても嬉しい知らせでした。国連が動いてくれたのです。これまでの地道な活動や努力が実を結んだ大きな大きな一歩で、他の特定失踪者家族にも、支援してくれた方々にも勇気を与えてくれた出来事でした。
「国連受理」というのは、国連が兄を拉致被害者として扱ってくれ、事実上拉致認定してくれたことを意味します。その重みを北朝鮮や日本政府にも認識して欲しいと思います。しかし、残念なことに受理から6ヶ月過ぎた現在まで、北朝鮮からの返答はありません。そして、さらに無念なことは、日本政府が兄・藤田進を「拉致被害者」として認定すらしない状態が8年半以上続いていることです。
拉致で捜査調査868人
兄と同じような北朝鮮の拉致が疑われる失踪者を「特定失踪者」と呼んでいます。民間の「特定失踪者問題調査会」が把握する失踪者は全国に約470人います。そして、去年の暮れ、警察庁はその対象者が全国で「868人」にのぼる事を初めて公開しました。政府認定の拉致被害者17人(5人帰国)との桁違いの数の差は一体どういうことでしょうか。実際に拉致された被害者は一体何人いるのでしょうか。認定されている拉致被害者は「氷山の一角」にしか過ぎないのではないでしょうか。北朝鮮による拉致は、50年以上前から実行され、現在も進行中であることを考えれば、私たちの想像をはるかに超える多くの拉致被害者がいても決しておかしくはありません。昔から「神隠し」と言われていた謎の失踪が、実は「北朝鮮による拉致」だったことを思えば・・
質問主意書に対する残念な答弁書
去る、1月26日に有田芳生参議院議員が兄・藤田進に関する質問主意書を提出し、その答弁書が返ってきました。10項目の最後の質問「政府が進氏を拉致被害者と認定しない理由は何か。具体的に明らかにしてください。」に対し、「藤田進氏に係る事案については、北朝鮮による拉致の可能性を排除できない事案として、関係機関が連携を図りながら、捜査・調査を推進しているが、これまでのところ、北朝鮮による拉致行為があったことを確認するには至っていない。」が日本政府の公式な答弁です。
本人の写真が日本の家族に届いても、北朝鮮で目撃されても、実行犯の告白があってもこうした無機質で無感性で、無情な官僚答弁を繰り返すのが、今の日本の政治の現実です。どういう思考でこう言う答弁が出てくるのか。まるで、北朝鮮が回答しているのではと錯覚してしまうほど酷い答弁書です。こうした、国民を小馬鹿にした回答を続ける日本の政治の現実に直面する度に、今の日本の硬直した官僚的な体質や制度・構造を変えなければ、拉致被害者の救出は有り得ないのでは、と思うこの頃です。
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金正恩への手紙
投稿日 2013年5月8日 投稿者: ryokuhuuka
941780_487836151289226_588904122_n北朝鮮のトップ、金正恩へ手紙を書いて、今日5・7衆議院議員会館の第2会議室で「北朝鮮難民救援基金」主催の記者会見の中で、その書簡を公開し読み上げました。会見終了後、国会内にある郵便局へ行き投函。以下、その全文と写真。
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金正恩労働党第一書記への書簡
朝鮮民主主義人民共和国
朝鮮労働党 金正恩第一書記 閣下
私の兄・藤田進を日本に帰して下さい。兄は37年前の1976年に貴国の工作機関とその協力者によって日本から貴国に拉致されました。貴国で生存している事は様々な情報から明らかになっています。その他にも、多数の拉致被害者情報を日本は把握しています。
閣下にも家族があるように、私たちにも家族があります。貴国が過去犯してきた多くの他国民を拉致するという反人道行為を容認し続けるのですか?もし、あなたの愛する家族が他国の工作機関によって拉致されたら、あなたはどうしますか?
拉致した日本人すべてを日本の家族のもとへ帰して下さい。十数カ国に及ぶと言われる拉致被害者全員をそれぞれの母国の家族のもとに帰して下さい。この決断をして下さい。
もし万一、貴国が被害者の証拠隠滅すなわち殺害をするようなことがあれば、日本や世界各国からの非難や報復は必至です。いくら隠し続けても無駄です。非道で不法な行為は、人々の記憶に刻まれ、決して消えることはありません。
昨年(2012)の8月15日付けで、国連から私の兄・藤田進の所在と安否確認に関する書簡が貴国へ送られています。8ヶ月を過ぎた今現在も貴国からの回答がありませんが、この国連の書簡への誠実な回答をして下さい。
又、朝鮮民主主義人民共和国による組織的で広範囲に及ぶ人権侵害は国際社会に広く知られております。本年3月21日、スイスのジュネーブの国連人権理事会は、貴国の「人道に対する罪」を調査する事実調査委員会(COI)の設立を決めました。近々行われる国連の事実調査委員会(COI)の調査に協力して下さることを希望します。
世界は閣下の発言や行動を注視しています。もし、閣下が、拉致被害者の解放を決断できなければ、貴国の未来はなくなるでしょう。しかし、解放を決断できれば、英明な判断と指導力に評価は高まり、貴国の未来は明るくなるに違いありません。何の罪もない一般の人々をこれ以上拉致し監禁し拘束し続けることは無益であり許されることではありません。
横田めぐみさんや田口八重子さんらを含むすべての拉致被害者を即刻日本に帰し、加えて貴国の国内の人権状況を改善に導いてください。日朝国交回復を果たし日本からの経済支援のもとで貴国が未来に向かって明るく開かれた豊かな国になる事を願って止みません。
2013年5月7日 藤田隆司
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2013年 8月13日
北朝鮮による拉致の真相と全容解明を急げ
「少なくとも100人、実際はそれより遥かに多くの人」と、特定失踪者問題調査会の荒木代表は10年前から言っていた。北朝鮮に拉致された日本人は、一体何人いるのだろうか。拉致の疑いがある失踪者はこれまで、調査会が把握する約470人だった。が、実はその倍いることが明らかになった。
去年の暮、警察庁が拉致の可能性が排除できない失踪者868人(現在864人)という具体的数を初めて明らかにした。この数は、10年前から分かっていた数で、10年後にようやく警察庁は開示することになった。しかも、警察自ら発表したものではなく、救う会徳島の陶久代表による情報公開請求の求めに応じ、やむなく開示されたものである。
消えた身内の失踪を、北朝鮮の拉致かもしれないと申し出た家族にとって、警察はその拠り所であり、警察を信じて地元の警察に届け出た家族が約900件。現に私も、警察は、きっと兄の所在や失踪の原因を解明してくれるものと信じ、地元の警察に届け出て公開した。しかし、家族の期待とは裏腹に、兄の失踪の真相を解明してくれたのは、警察ではなく民間の組織や民間の人々だった。写真を手に入れたのも民間、目撃証言も実行犯の告白も全て民間の努力で入手できたものである。片や、警察は「全力を尽くしています」と言うばかりで、何ら有力な情報を家族に伝えることはなかった。
もし、10年前に警察がこの数字を公表していれば、拉致問題の認識やその後の事態の推移位は大きく変わっていたに違いない。なぜ、10年前に公表しなかったのか。悔やまれる事ではあるが、余りにもその判断が遅過ぎる。警察は本気で拉致事件の真相や全容を解明しようとしているのか、日本の官の「本気度」が今こそ問われている。
北朝鮮による拉致の真相と全容解明を急げ。被害者全員を救出せよ。
~拉致から37年、闘いは続く~ 藤田隆司
2013年 2月 22日
兄・藤田進 拉致から37年
横田めぐみさんや田口八重子さんが拉致される約2年前の昭和51年2月7日、当時19歳だった私の兄・藤田進は川口の自宅を出た後、忽然と姿を消してしまいました。それ以来、家に戻って来なくなってから、今年で丸37年になります。兄は今、56歳。大学1年生で体育教師を夢見ていた兄の失踪の真実が明らかになったのは、失踪28年後の平成16年夏の事です。脱北者が北朝鮮から持ち出した写真に写る人物がなんと、兄・藤田進本人そのものだったのです。衝撃的な事実が28年後に、初めて明らかになったのです。(その後、写真以外にも北朝鮮での目撃証言や実行犯の生々しい告白も・・。)この決定的な写真が、北朝鮮による拉致の証拠であり、兄が北朝鮮で生きていた証です。
国連受理から半年
去年(平成24年)の7月、私はジュネーブ(国連・強制的失踪作業部会)で兄の件と特定失踪者全般について陳述してきました。そのわずか1ヶ月後の8月15日、国連は兄の失踪案件を正式に受理してくれ、北朝鮮に書簡が送付されました。その書簡の内容は「藤田進の人権を守るため、その居場所と安否を明らかにする事」を北朝鮮に求めたものです。この国連からの知らせは、家族にとってとても嬉しい知らせでした。国連が動いてくれたのです。これまでの地道な活動や努力が実を結んだ大きな大きな一歩で、他の特定失踪者家族にも、支援してくれた方々にも勇気を与えてくれた出来事でした。
「国連受理」というのは、国連が兄を拉致被害者として扱ってくれ、事実上拉致認定してくれたことを意味します。その重みを北朝鮮や日本政府にも認識して欲しいと思います。しかし、残念なことに受理から6ヶ月過ぎた現在まで、北朝鮮からの返答はありません。そして、さらに無念なことは、日本政府が兄・藤田進を「拉致被害者」として認定すらしない状態が8年半以上続いていることです。
拉致で捜査調査868人
兄と同じような北朝鮮の拉致が疑われる失踪者を「特定失踪者」と呼んでいます。民間の「特定失踪者問題調査会」が把握する失踪者は全国に約470人います。そして、去年の暮れ、警察庁はその対象者が全国で「868人」にのぼる事を初めて公開しました。政府認定の拉致被害者17人(5人帰国)との桁違いの数の差は一体どういうことでしょうか。実際に拉致された被害者は一体何人いるのでしょうか。認定されている拉致被害者は「氷山の一角」にしか過ぎないのではないでしょうか。北朝鮮による拉致は、50年以上前から実行され、現在も進行中であることを考えれば、私たちの想像をはるかに超える多くの拉致被害者がいても決しておかしくはありません。昔から「神隠し」と言われていた謎の失踪が、実は「北朝鮮による拉致」だったことを思えば・・
質問主意書に対する残念な答弁書
去る、1月26日に有田芳生参議院議員が兄・藤田進に関する質問主意書を提出し、その答弁書が返ってきました。10項目の最後の質問「政府が進氏を拉致被害者と認定しない理由は何か。具体的に明らかにしてください。」に対し、「藤田進氏に係る事案については、北朝鮮による拉致の可能性を排除できない事案として、関係機関が連携を図りながら、捜査・調査を推進しているが、これまでのところ、北朝鮮による拉致行為があったことを確認するには至っていない。」が日本政府の公式な答弁です。
本人の写真が日本の家族に届いても、北朝鮮で目撃されても、実行犯の告白があってもこうした無機質で無感性で、無情な官僚答弁を繰り返すのが、今の日本の政治の現実です。どういう思考でこう言う答弁が出てくるのか。まるで、北朝鮮が回答しているのではと錯覚してしまうほど酷い答弁書です。こうした、国民を小馬鹿にした回答を続ける日本の政治の現実に直面する度に、今の日本の硬直した官僚的な体質や制度・構造を変えなければ、拉致被害者の救出は有り得ないのでは、と思うこの頃です。
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金正恩への手紙
投稿日 2013年5月8日 投稿者: ryokuhuuka
941780_487836151289226_588904122_n北朝鮮のトップ、金正恩へ手紙を書いて、今日5・7衆議院議員会館の第2会議室で「北朝鮮難民救援基金」主催の記者会見の中で、その書簡を公開し読み上げました。会見終了後、国会内にある郵便局へ行き投函。以下、その全文と写真。
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金正恩労働党第一書記への書簡
朝鮮民主主義人民共和国
朝鮮労働党 金正恩第一書記 閣下
私の兄・藤田進を日本に帰して下さい。兄は37年前の1976年に貴国の工作機関とその協力者によって日本から貴国に拉致されました。貴国で生存している事は様々な情報から明らかになっています。その他にも、多数の拉致被害者情報を日本は把握しています。
閣下にも家族があるように、私たちにも家族があります。貴国が過去犯してきた多くの他国民を拉致するという反人道行為を容認し続けるのですか?もし、あなたの愛する家族が他国の工作機関によって拉致されたら、あなたはどうしますか?
拉致した日本人すべてを日本の家族のもとへ帰して下さい。十数カ国に及ぶと言われる拉致被害者全員をそれぞれの母国の家族のもとに帰して下さい。この決断をして下さい。
もし万一、貴国が被害者の証拠隠滅すなわち殺害をするようなことがあれば、日本や世界各国からの非難や報復は必至です。いくら隠し続けても無駄です。非道で不法な行為は、人々の記憶に刻まれ、決して消えることはありません。
昨年(2012)の8月15日付けで、国連から私の兄・藤田進の所在と安否確認に関する書簡が貴国へ送られています。8ヶ月を過ぎた今現在も貴国からの回答がありませんが、この国連の書簡への誠実な回答をして下さい。
又、朝鮮民主主義人民共和国による組織的で広範囲に及ぶ人権侵害は国際社会に広く知られております。本年3月21日、スイスのジュネーブの国連人権理事会は、貴国の「人道に対する罪」を調査する事実調査委員会(COI)の設立を決めました。近々行われる国連の事実調査委員会(COI)の調査に協力して下さることを希望します。
世界は閣下の発言や行動を注視しています。もし、閣下が、拉致被害者の解放を決断できなければ、貴国の未来はなくなるでしょう。しかし、解放を決断できれば、英明な判断と指導力に評価は高まり、貴国の未来は明るくなるに違いありません。何の罪もない一般の人々をこれ以上拉致し監禁し拘束し続けることは無益であり許されることではありません。
横田めぐみさんや田口八重子さんらを含むすべての拉致被害者を即刻日本に帰し、加えて貴国の国内の人権状況を改善に導いてください。日朝国交回復を果たし日本からの経済支援のもとで貴国が未来に向かって明るく開かれた豊かな国になる事を願って止みません。
2013年5月7日 藤田隆司
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2013年 8月13日
北朝鮮による拉致の真相と全容解明を急げ
「少なくとも100人、実際はそれより遥かに多くの人」と、特定失踪者問題調査会の荒木代表は10年前から言っていた。北朝鮮に拉致された日本人は、一体何人いるのだろうか。拉致の疑いがある失踪者はこれまで、調査会が把握する約470人だった。が、実はその倍いることが明らかになった。
去年の暮、警察庁が拉致の可能性が排除できない失踪者868人(現在864人)という具体的数を初めて明らかにした。この数は、10年前から分かっていた数で、10年後にようやく警察庁は開示することになった。しかも、警察自ら発表したものではなく、救う会徳島の陶久代表による情報公開請求の求めに応じ、やむなく開示されたものである。
消えた身内の失踪を、北朝鮮の拉致かもしれないと申し出た家族にとって、警察はその拠り所であり、警察を信じて地元の警察に届け出た家族が約900件。現に私も、警察は、きっと兄の所在や失踪の原因を解明してくれるものと信じ、地元の警察に届け出て公開した。しかし、家族の期待とは裏腹に、兄の失踪の真相を解明してくれたのは、警察ではなく民間の組織や民間の人々だった。写真を手に入れたのも民間、目撃証言も実行犯の告白も全て民間の努力で入手できたものである。片や、警察は「全力を尽くしています」と言うばかりで、何ら有力な情報を家族に伝えることはなかった。
もし、10年前に警察がこの数字を公表していれば、拉致問題の認識やその後の事態の推移位は大きく変わっていたに違いない。なぜ、10年前に公表しなかったのか。悔やまれる事ではあるが、余りにもその判断が遅過ぎる。警察は本気で拉致事件の真相や全容を解明しようとしているのか、日本の官の「本気度」が今こそ問われている。
北朝鮮による拉致の真相と全容解明を急げ。被害者全員を救出せよ。