今回は色々調べていたら少し長くなりました…。
1907年、長年発行されていた金貨のデザインがついに一新!
セントゴーデンス20ドル金貨
これまでのクラシックなリバティ金貨に描かれていた、羽を大きく広げた白頭鷲から、飛翔中の白頭鷲のデザインへ。
発行期間は1907年から1933年までと、まさに、米国が世界の覇権国へ一気に飛翔した時代で、発行枚数は約7029万枚とこれまた超弩級。
コインのデザインはセオドア・ルーズベルト大統領から指名されたAugustus Saint-Gaudensによるもので、このコインの1933年に発行されたものはその後、エジプトのファルーク一世、9.11にまつわるストーリーを辿ることになります。
1933年にアメリカ政府が金貨の流通を禁止し、セントゴーデンス20ドル金貨の発行は終了。
背景には、大恐慌で金が大量に引き出されてしまい、政府が金を回収してドルを守ろうとした情勢によるもの。ちなみにこの号令はフランクリン・ルーズベルト政権時代。
その結果、1933年に作られた金貨もほとんど溶かされ、今では幻の存在に。造幣局から不正に流出したものあったようですが、その都度政府が押収していたという。
しかしそんな中、20枚の1933年発行のダブルイーグルはアメリカ造幣局の手を掻い潜り、うち一枚は1944年にエジプトのファルーク一世の手に渡りました(盗品だったにも関わらず、不手際で輸出許可証が発行された)。
ファルーク一世はその後1952年にクーデターで国外追放となり、1954年にその膨大なコレクションがSotheby’s(カイロ)でのオークションにかかる事となり、その時にアメリカ政府からの要請でこの1933年発行のダブルイーグルは除外・アメリカへの返却が要請されました。
しかし、除外はされたものの、その後40年間にわたって所在不明に…。すごいミステリーですね。
時は流れて1995年、イギリス人の著名コレクターのスティーブン・フェントン(Stephen Fenton)氏がこのダブルイーグルの取引でコンコルドでNYにやってきた。彼はファルーク王のコインコレクションを集めていたのですが、今回はこの超レア(というか違法?)の1933年のダブルイーグルの取引でやってきたのです。ところが、この取引が密告されていて、諜報機関に捕まり、ダブルイーグルも政府管理下になりました。
その後、このコインが保管されていたのは、今はなきworld trade center…。その後Fenton氏とアメリカ政府との所有権をめぐる裁判が2001年に終結し、このコインはオークションに出品されることになります(販売利益は折半)。
実はこのオークションの数ヶ月前に、コインはworld trade centerからFort Knox(ケンタッキー州の軍事施設)に移送されていました。
あの、2001年9月11日の同時多発テロの悲劇から難を逃れたわけです。
その後、このコインは2002年にStacks Bowersオークションに出品され、約759万ドル(11億円)で個人が落札。1933年の20ドル金貨1枚のみ、合法的に個人所有できることが認められたのです。
そして、2021年にはSotheby’sにて、ビックリ価格の約1,890万ドル(約29億)で落札!
このストーリーをぜひ映画で観たいです。
他の行方不明のコインのその後の話も、コインの絵を書き直した時にブログに書けたらいいなと思います。
さて、このデザイン。
最初に見た時は、シンプルなデザインですぐに描けると思ったのだが、いざ描いてみると、かなり難しい。白頭鷲の位置、傾き、長さ、占有率、どれも絶妙すぎる。
そして、白頭鷲の顔も油断すると、カモメのようになってしまい、何回も書き直し…。
リバティ金貨のデザインの方が好みであったものの、どちらが優れているかは別として、
セントゴーデンス金貨は「共和国が歩き出す瞬間」を刻んだコインであることは間違いないですね。
また、描きなおしたいと感じたコインです。皆さんはどちらのイラストが好きですか…笑

