
今日は「その2」を書いてみます。 言っておきますが・・・「3」はありませんよー。
歯科医院で使う麻酔は、「カートリッジ」と言って、ガラスのシリンダーのようなものの中に入っています。
こういう状態です。これを注射器にセットして使うのですが、1本にどのくらいの量が入っていると思いますか?
一番左の物と、左から2番目の物は同じ種類の麻酔薬ですが、カートリッジの大きさが違います。左端が1、0ml 他のものは1、8ml入っています。
自分が打たれる時は、凄くいっぱい打たれているように感じますよねー。でも、1本全部を打っても1、8ml、実はそんなに沢山の量は打っていないんです。1本全部をうたなくても効くことは多々あるので、約半量の1mlのカートリッジがあったりするんですよ。
歯科の麻酔薬の特徴は、他の科の麻酔薬には添加されていない「血管収縮剤」というものが入っているところです。その名の通り、血管がギュッと締まるんですね。
なぜ?
口の中は少し切っただけでもすんごく出血するでしょう?
いや、実際には唾液と血が混じって多く感じているんですけど、にしても、簡単に出血しやすいですよね。
口の中は皮膚ではなくて粘膜なので、血管が実際に豊富です。なので、この出血を少し抑えないと、私たちドクターは歯を抜こうと思っても、出血で真っ赤になっていて歯が見えなかったり、あるいは血管が豊富ということはそれだけ代謝も早いので、血液の流れがいつも通りだったら、せっかく入れた麻酔の薬もすぐにその場から代謝されて無くなってしまい、さあ歯を削ろう、と思ったらもう麻酔が切れてしまって痛いということになったりしてしまいます。だから血管を収縮させて血の流れを悪くして、出血を少なくしたり、麻酔薬の効いている時間を長くしたりするわけです。
血管収縮薬の入っている物を使用した場合で、多くの方は2時間ほどすると徐々に感覚が戻ってきます。
感受性はバラバラですので、中には、夜中までしびれているという不快感がある方もいらっしゃいました。
一度だけ、治療後から2時間をきっちり計っていらっしゃたようで、「2時間たっても麻酔が切れないけど、おかしいのでないか」 という、怒りの電話をもらったことがありましたが、「大体2時間ですが、人によってまちまちですので、3時間の場合もあれば・・・・・・・・・・・・・・・」と、どこまで説明すれば良いのか??難しい時もありますわ
でも、普通の処置の場合なら、必ず感覚は戻ってきますのであせらずお待ちください。
長く効いていて不快感があったなら、次回の来院時にそれを伝えた方が良いと思います。麻酔の量を減らすとか、薬の種類を変えるとか、試してみる事は出来ますからね。
血管収縮剤が入っているので、例えば指先を切ってしまったから縫わなくてはいけない!なんていう場合に、歯科用の麻酔薬をすると、指先に血が通わなくなり、壊死してしまう危険もあるんですよ。だから麻酔薬には「歯科用」ってわざわざ書いてあったりします。
さて、麻酔の薬の種類ですが、竹内歯科には3種類のものを用意しています。
最初の写真の左端と左から2番目は「オーラ注カートリッジ」と言います。もっとも一般的な「リドカイン」という麻酔薬に「エピネフリン」という血管収縮薬が添加されています。効果は確実で(その1に書かせて頂いたような特別な場合は効かないこともあります)、麻酔が効いている時間も長いため、ドクターとしてはやりやすい薬です。
余談ですが、新薬を開発する時には、何人もの被験者にテストをしてデータをとって、ちゃんと効果がありますよ、というのを提出しないと、薬として世の中に出てこれないわけですが、この「オーラ注」が効くかどうかをテストする被験者になりましたよ、ワタシ。「被験者」ですから、やられた側ですよ!!前歯に麻酔して、何秒後に痛くなくなるか電気刺激を与えてテストして、その後何時間あとまで効果が続いているのかも電気刺激で調べる、っていうのを2回位やられたな~前歯の麻酔は痛かったけど、打ってから30秒ほどで効果が現れたのを覚えてます。
話をもとに戻して、この「エピネフリン」という血管収縮薬は、動脈を収縮させるため血圧の高い方や、心臓に病気をお持ちの方には注意が必要な薬でもあります。
写真の右端は「歯科用シタネスト―オクタプレシン」。やはり血管収縮薬を含んでいますが、先ほどの物とは違う「フェリプレシン」という名前の収縮薬になります。この薬は主に静脈を収縮させるので、多少出血を抑える力が弱いとも言われていますが、私は特に困った経験はありません。
オーラ注が使えないような血圧や、心疾患をお持ちの方にはこちらを選択した方が安心ではあります。
ただ、この麻酔薬(プロピトカイン)は簡単に胎盤を通過してしまうし、血管収縮薬(フェリプレシン)は子宮収縮作用があるため、妊婦さんでは使用しない方が良い薬です。
写真の右から2番目の物は「スキャンドネスト」という薬で血管収縮薬を含んでいないカートリッジです。出血が抑えられないので、血が出る処置には使いたくないですが、麻酔が効きすぎて不快感があったような方が、歯を削る時など、出血しない処置をする時には、この薬でやってみるのもいいと思います。
あとは子供ですね。感覚が無いのが面白くて、「咬んじゃだめだよ」と、言っても、咬んでしまって、ほっぺが傷だらけということもありますから、収縮剤が無い分、麻酔の効果も短いこの薬が良いかもしれません。
さらに、どうしても怖くて怖くて仕方がない方の為に、「笑気吸入鎮静」もあります。
鼻から「笑気」という、その名の通り、吸うと気分が良くなって笑いたくなるようなガスを30%の濃度で吸って頂いて、恐怖心を取り除くものです。
私は学生の時、笑気麻酔の実習時に、ず~っとしゃべっていて、全然効かなかった記憶がありますがそもそもしゃべっちゃいけないんですよ、これをやる時は
しゃべったら効かないってことを実習したってことで、まあいっか、と、思いましたけど、しずか~に吸入して頂けたら、そのうちボーとしてきて怖さが減るんですね。残念ながら、泣き叫んでしまう子供さんには効かない可能性が高いです。
ボーっとしても意識はありますから呼び掛けには答えられますし、ちゃんと記憶もありますよ。
覚ます時には100%の酸素を吸入して頂くだけですので、何かを注射したりはしません。
そんなことが出来る装置もありますので、お悩みの時には思い出してみてください。
ただ吸って気持ちよくなってみたいだけの者には笑気は使わないからな―