今日、自分で自分を褒めてあげた出来事があった。
メキシコのような危ない国では、自分の身を自分で守る能力がなければ生きていけない。その能力が、思いのほか自分には備わっていたなあと実感したのだ。
実は近々ある町のFホテルに泊まることになっている。これはA社からの要請である。不定期ではあるが、これまで何十回と行ってきた。そして前回までは、空港であれバスターミナルであれ、私が到着する所にA社のドライバーが迎えに来てくれて、ホテルまで送ってくれていた。
それが今年から廃止された。理由は知らないが、要は「今後は、ホテルまでは自力で行け」ということだ。ここが日本だったら全然問題ないし、全く悩まないだろう。だが、ここはメキシコだ。
A社の迎えがなくなったと知らされたとき、ショックと同時に三つの選択肢が浮かんだ。安全だと思う順に書くと、こうなる。
1)Fホテルの車に迎えに来てもらう
2)A社のカルロス(ドライバーの配車責任者で、信頼できる人。個人的にも親しくしている)に信頼できるタクシー運転手を紹介してもらう(夜明日出夫さんのような・・・)
3)バスターミナルのタクシーを使う
バスターミナルには、何時であってもターミナル・タクシーが待っている。乗りっぱぐれはない筈だし、昔と違って料金もちゃんと統制されている(ボッタクリはない)筈だし、運転手が強盗や誘拐犯に変身することも多分ないとは思う。
だがしかし、その保証はない。
どのタクシーに乗ったとしても、私は運転手が何処の誰なのかわからない。無事にホテルに着くまで緊張が続くことになる。
それに、自分だけの体ではない。もし万が一、私が無事にホテルへ着けなければ、A社にとんでもない迷惑をかけてしまう。だから、自分の身の安全は絶対に確保しなければいけない。
大袈裟かもしれないし、心配も度が過ぎているかもしれないし、頭がおかしいのかもしれない。でも自分では、大袈裟だとも狂っているとも思わない。至極まともだと思っている。
そこで、「駄目で元々」を覚悟しながらFホテルの支配人にメールを送った。過去に何度かメールのやり取りをしていたので、メールアドレスは知っていた。「今後も何かあれば、何でも仰ってください。いかようにも対応させて頂きます」と言われていた。もちろん、接客の常套句だろう、世辞だろう。でもそれを敢えて<文字どおりの意味>に取らせてもらった。
「A社からの迎えがなくなったので、御ホテルから迎えに来てもらえませんかね?」ということを、言葉を選びに選んで書き送った。
・宿泊の度にスタッフに気持ちのいい対応をしてもらっている事への感謝。
・支配人個人の健勝を祈る言葉。
・近々また泊まらせてもらうが、今の時期は朝食ビュッフェに冬季限定のホットドリンクが出されて、これが最高に美味しい。だから行くのが楽しみであること。
・実は、これまでA社が出してくれていた出迎えが廃止されたこと。
・日頃から、安全は何事にも優先するものだと思っていること。
・そこで、不躾ながら御ホテルから迎えの車を出してもらえるかどうか検討していただけると有難いこと。
・私の到着日時、バス会社名などの情報。
心にもないお世辞は言えない質なので、私が表す褒め言葉や感謝の言葉は全部100%の本音である。相手への敬意と感謝を込めながら、言うべき事(出迎え依頼)はしっかり言う。読み手が混乱したり誤解したりしないように、物事は具体的に明瞭簡潔に書く。
それを夫(メキシコ人)に添削してもらった。多少の手直しはあったが、9割方は原文のままだった。ヨッシャ!私のスペイン語力も悪くないんじゃない?
それを送ったのが今日の未明だったが、朝起きてみたら、なんと朝一番で返事が届いていた。速い!しかも内容は「オッケー。喜んで出迎えの車を出しますよ」だった。ヤッホー。
やるなあ、支配人。即断即決。
やるなあ、私。
無口で口下手で不愛想なのに、書くことは得意なのよ。そして、何よりも「自分の身を守るためなら、図々しいババアだと思われようと、神経質な気違いだと言われようと知ったこっちゃない。自分を守れるのは自分だけなんだから」という信念を貫いたことが偉い!よくやった、ワタシ!
日本では全く必要とされないだろう、サバイバル能力。メキシコ、恐るべし。