母さん、僕のあのリボン、どうしたんでせうね?

ええ、春のまだ少し冷たい海で、

気づいた時には髪から落ちて失くなっていたあのリボンですよ。
 
母さん、あれは好きなリボンでしたよ、
 
僕はあのときずいぶんくやしかった、
 
だけど、海鮮丼と浜焼きとソフトクリームが美味しかったものだから、
 
帰る時間になるまでリボンがないことに気づかなかったのですもの。
 
母さん、ほんとにあのリボンどうなったでせう?
 
母さん、そして、きっと今頃は、今夜あたりは、
 
どこかの浜に流れ着いているか、海中の魚が気に入って背ビレに結んでいるでせう、
 
昔、ヒラヒラ揺れた、あのダイソーで買った100円のリボンと、
 
海鮮丼と迷って食べなかったお刺身定食への未練を埋めるように、静かに、寂しく。