小説ブログ

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まったりと創作小説を書いていこうと思います。
忙しい人には短編を、暇な人には長編を読んでもらえればと思っています。

ご訪問ありがとうございます!

ここには小説の#1と簡単な説明を載せて行きたいと思います。
好きなものから読んでくださいね。
あと、改行が多いと言われてしまったのですが、(主にスマートフォン上での)見やすさを考慮の上ですのでご了承ください(^^;)

はじめまして&小説「1/2」#1

中学2年生である少年たちが、受験や進路について14歳ならではのたくさんの葛藤をして成長するお話です。(#1~#10)

短編小説「私の愛した人」前編

現実世界を超えたところで女の子が恋をするお話です。(前編・後編)

長編小説「おもいやり」#1

少年たちがいじめについて深く考えるお話です。(#1~#10)

短編小説「タンポポ」

心の声が聞こえる少女を友達に持つ主人公のお話です。(1話完結)

短編小説「言葉」

死にたい人へのメッセージです。
※応援メッセージではありません。お気を悪くされる表現が含まれています。(1話完結)
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長編小説「生きがい」#5(最終話)





それから毎日岸谷凪のお見舞いへ行ったが、容態はどんどん悪化していった。そして彼もそのことが分かっているようで、だんだんと私に過去の話ばかりするようになってきた。

「あの時、楽しかったね」と言われるたび、胸が締め付けられるような苦しさを覚えた。彼はいなくなるんだと。

私は常に勉強ばかりの人間で、友達があまりいなかった。初めての彼との出会いも、正直、彼が変な人で面倒だと思っていた。けれど、たくさん会って話して、人とのかかわりがこんなに楽しく、人との別れがこんなに苦しいと初めて知った。

「最後まで、傍にいてあげてください」

今日、医師から改めて話を聞かされ、今晩が山場という事を言われた。

落ち込まない顔をしないように、ひきつった笑顔で病室へ入る。

「……元気ないね」

当たり前だが、すぐに見透かされる。彼の父親が「そうか?」と笑った。

「うん」

「具合はどうだ?」

「今は大丈夫。なんか、俺よりもお父さんの方が具合が悪そう。寝れてないの?」

「あはは……まあな……」

「じゃあ、寝てきなよ、家帰って。せっかく仕事休んでるんだし」

「馬鹿、何のために休んでいると思ってるんだ」

「俺の為?」

「当たり前だろ」

「ふふん」

何故か彼は得意げに布団の中に潜り込んだ。

「……お母さんだって、霧島さんだって、お前の為にこうして来ているんだ。毎日、毎日」

「うん。……ありがとう」布団の中から声が聞こえてきた。

「礼はいらないから、早く……」

彼の父親は、言いかけて黙り込んだ。喉が詰まって声が出せない様子で、絞るように「早く、元気になれ」と言った。

「うん」

ひょっこりと顔を出した彼は寂しそうに笑った。

「いろいろ、お前に厳しくした面もあったが……」

「いや、それは俺が悪いって、解ってる。散々心配かけたのに心ない事を言ってごめん」

この間、私が帰った後、彼らはしっかり話をし、岸谷凪も自分の思いをしっかりと両親へ伝えたらしい。その話を聞いてから3人を見ると、以前よりも打ち解けてより家族らしかった。

「桜ちゃんも、こんなに毎日来て平気?」

彼の母親が心配するように言った。

「大丈夫です」

「そっか。無理しないでね」

「はい……」

「すみません、ちょっといいですか」突如、病室のドアが開き、後方から声が聞こえた。看護婦だった。

彼の両親が「あ、はい」と、声をそろえて反応し、顔を見合わせた。

「何か大切な話かな?行って来ていいよ」

彼は笑って言った。私も「残るんで、行って来てください」と両親を促す。

「ありがとうね」と両親が言って看護婦と共に廊下へ出て行った。

「好きにしても良いって言われたのに、結局最期も病院かあ」

2人がいなくなった途端、彼は溜息をつくように呟いた。

「最期」という彼の言葉には何か重みがあり、何も言い返せなかった。

「人生の8割を病院で過ごしたよ」

「そうですか……」

「あ、ごめん、最期とか言っちゃって……なんか、あの二人の前だと言いづらいから」

「いいんですよ、両親になら弱音吐いたって。自分たちよりも私を優先されたって、悲しみますよ」

「でも……やっぱり、なんか……何でもない」

「言いたくないことは言わなくてもいいけれど、弱音吐きたかったら言ってください」

「でも、なんか、一応男だし」

「男性は弱音を吐いてはいけないというルールがあるんですか」

「いや、ないけど……暗黙の了解ってやつだよ。昔から、男は」

「どこかに、それは正しかったって書いてありましたか?」

「書いてはないけど……」

「心の持ちように男女差なんてありませんから当たり前です。それに、あなたが泣いている姿も見ましたし、今更どんな弱音聞いても驚きませんよ」

初めは躊躇っていた彼も、私のこの言葉が心強かったのか、ぽつぽつと話し始めた。

「もう死ぬのは解ってる。でも、両親とか、霧島さんとかが励ましてくれるから、あんまり言えなくて……『もっと生きたい』も『またどこか行きたい』も全部、死ぬのを前提に話してるから、そうすると二人は悲しむし……霧島さんが悲しまないとか、そういう事じゃなくて」

「わかってます。大丈夫です。家族は、特別ですから苦しいです。誰よりも見てくれている存在だから」

自分でそう言って、胸が痛んだ。家族は、特別だから――私も、彼にそう言われるくらいの存在になりたかった。

「ありがとう、本当に」彼はぽたぽたと涙を零した。そこへ両親が戻ってきた。表情から察するに、きっといい話ではなかっただろう。

「おかえり」彼も同じように察していたようで、彼の両親に向けて涙を零しながら、笑顔を作った。

それから、他愛のない話をしている中で、小さな沈黙が出来た時、彼はふと「ありがとう」と一言呟いた。

「どうしたの、突然」私たちは不思議そうに彼を見た。彼は俯き加減に顔を引きつらせながら、続けた。

「いや、こうして、話聞いてくれて、看病してくれて、ありがとうって、思って。前にも言ったけれど……」

「お礼なんていらないわよ」と、彼の母親が泣きながら言った。本人の前では泣かないようにしていたみたいだが、我慢できなかったようだ。私の目からも涙がこぼれ出た。

夜8時くらいになり、私までもが夜中に付き添う事は出来ず、家に帰らされた。病室を出ようとしたところで、岸谷凪に「あ、霧島さん」と声をかけられ、立ちどまったが「やっぱりなんでもない」と言われてしまった。まあ明日詳しく訊こう、とただひたすらに彼に会えることを願っていたが、その日はついに訪れなかった。

「――今まで、本当にありがとうございました」

彼の両親が、わざわざ私の家に来てまで頭を下げた。

「いえいえ、ずっと家に居た娘も相当凪君が支えになってたみたいで、こちらこそ感謝しています。本当に……すみません、今、娘出てこれないみたいで」

そう沙希が対応している。覚悟はしていた。けれど、やはり期待の方が大きかった。これからも一緒に話せるんじゃないか、勉強できるんじゃないか、遊びに行けるんじゃないか。

昨日散々泣いたのに、未だに涙が出てきた。彼の存在は、私の中でこんなにも大きかったのだ。

その後リビングで彼女らは何やら世間話をしていたが、私の耳には届かなかった。やがて数分経ってから、沙希が私の部屋に来た。

「桜、凪君のご両親が来てたわよ」

「……うん」

「それで、これ……」

沙希はポケットを探り、一本のシャーペンを差し出した。それは紛れもなく私のもので、首をかしげる。

「何でお母さんが?」

「凪君のお母さんに渡されたの。あなた、忘れ物してたみたいよ」

「あ……そうだ、そう言えばそんなこと言われたかも……」

私が家を飛び出した日だ。あのまま忘れ物を受け取らず、そのまま連絡しなくなってしまったのだ。けれど、忘れ物した日から幾度も会っている。その時に渡せばよいのに、と不思議に思った。

「あと、なんか……忘れ物した時に書いてたみたい」沙希が付け足す。

「えっ、わざわざ何を?」

「でもこれは桜に見せるものじゃないかな」

沙希の手元を見ると、小さなノートの切れ端にあったメモだった。ただ、「霧島さんに返す」と書いてあった。

「ありがとう」

私はそれらを受け取って、筆箱にしまおうとすると、メモの裏に何か書いてある事に気がついた。

今度こそ遊ぶ。ちゃんと感謝を告げる(先生にも)。勉強をちゃんとする……と、いくつかの項目が箇条書きで書いてあった。

「こんなメモ取ってたんだ……相変わらずだなあ」

独り言のように呟く。そして、彼が返しに来た日のことを思い出し、その時の彼の言葉を頭の中で並べた。

「霧島さんに出会って、毎日が楽しくなってきた」

思えば、あれが彼なりの感謝を告げる方法だったのかもしれない。もう年頃の男子高校生だった彼も、「ありがとう」と直接は言い難かったのだろう。死ぬ直前にはそのことも忘れて涙までこぼしていたけれど。

そんな彼の必死の思いを察することなく音信不通にしてしまった事を悔やんだ。

「ごめんね」と素直に書くわけでもなく、私は一言そのメモに「私に見られちゃだめなやつでしょ」とふざけ半分で書こうと、彼が返してくれたシャーペンを手に取った。

「あ……シャーペンの芯が入ってない」

筆箱を探り、シャーペンの芯を取り出し、シャーペンの頭の部分を外す。すると、そこから丸めてあった紙が出てきた。

「えっ、何これ……」

取り出して紙を広げると、そこには、文字が書いてあった。

――やっぱり直接告げられそうにないから、ここで言うね。霧島さん、大好きです。(恥ずかしくて死にそうだから気付いてもらう頃には死んでいたい)

「ふふっ」と声が出てしまった。2度目の彼の「大好き」だ。1度目のメールの時にはもう余裕がなくて、恥ずかしい感情すら忘れていたのだろう。

「本当に死んじゃったじゃない……」

笑いながら言う目から、ぽろぽろと涙が溢れ出た。

おそらく、最期話した夜、引きとめられたのはこのシャーペンを渡そうとしていたのであって、渡せなかったのは、きっと恥ずかしさからだろう。彼の心情を想像し、思わず微笑むような愛おしさを覚えた。

「今更恥ずかしがったって……メールでもう告げられてるのにね」

想いを告げることはできなかったが、私もきっと、彼が大好きだった。

第一印象は最悪を極めた生徒だった。勉強している私の前で、勉強の意義を訊いて、勉強なんていらないと言い切る。けれど、彼の事情や思いを訊いて、先生にも頼まれて、放っておけなくなっていった。

彼が私に出会えてよかったと言ってくれたように、私も彼に出会えて勉強以外の事がどれだけ大切なものかを知ることが出来たのだ。

けれど、「ありがとう」も「ごめんね」も彼は何度も言ってくれて、何度も元気づけてくれたのに、私は彼に何もする事が出来なかった。

「あーあ……またつまらなくなっちゃうよ。今まで通り、勉強漬けだったら、こんなに苦しまなかったのかなあ」

溜息をつくように呟いたが、この言葉に答えるように、彼の言っていた言葉が頭をよぎった。

「生きがいがあることは、幸せな証拠」

今までの私の生きがいは、大人になってから苦労しないように、勉強することだけだった。けれど、いつの間にか自習室へ行く理由が変わっていって毎日が楽しくて、確かに私は幸せだった。

――死ぬのが恐いとは思わなかった。なんでだろう。

「会えるって信じているから」

彼の言葉を声に出した。彼の口から出るものは綺麗なものばかりだと改めて感じた。そうだ、彼が会えることを信じてくれているのだから、私もそのことを信じて精一杯生きなければいけない。それが私のこれからの生きがいなのだと感じた。

私は、芯を入れたシャーペンを手に取り、シャーペンから出てきた紙の裏にくっきりと、文字を残した。

「私も、あなたのことが大好きでした。今度は勉強を教えられるといいな」





終わり。


百人一首のある首(私の大好きな句)を大テーマにして、そこからちょこちょこ変えて作りました。


追記※誤字訂正&一部言葉を変えました。