SBC信越放送が、「南箕輪村の人口増加の理由を取材」しました。「移住者」「アクセス」「土地の価格が安い」「子育て支援」、最後に、「20年前から力を入れてきた子育て支援によって移住者が増えた」「地域として移住者を受け入れる体制が根付いていることも、人気の一つ」との「お話」です。これに対して、地理学などから、基本を押さえて分析しなければなりません。まずは自然環境です。この地域は「伊那谷」、かつては「天竜川」を通じて、愛知県の三河や静岡県の遠江との結びつきが強かった、「三遠南信」とも称される地域です。鉄道の飯田線が開通しましたが、かつては「アクセスに難がある」地域で、人口増加の基礎となる、もともとからの人口が少ない地域でした。よく「人口増加」や「人口増加率が高い」ことが指摘される地域があるのですが、「もともとの人口が少ない」から「人口増加」する、「人口増加率が高い」ということとなるのです。特に「南箕輪村」は「村」であるように、「もともとは人口が少ない」「村」でした。理由は、伊那谷の平地部分は、「天竜川の河岸段丘」上で、段丘上は「水が乏しく」、「土地の価値」がかつては低く、「市」や「町」とはならず、当然、「土地が安い」こととなりました。しかし、その「土地の安さ」が注目されます。どこにインターチェンジをつくるか、最も安い場所が当然です。すなわち、この地を大変貌させたのが、「中央自動車道の開通」で、1960年代から随時開通、特に、この南箕輪村に伊那谷の中心にふさわしい、1970年代に「伊那インターチェンジが開設」され、1980年代に全線開通、東京・名古屋・大阪へと高速道路がつながり、伊那インターチェンジ乗り場から、毎日、東京・名古屋・大阪へと高速バスが発着します。後はお決まりの、「地方の土地の安さと人件費の安さ(最低賃金が安い)」を求めて、工場が立地、帝国書院の地図帳の「新詳高等地図」にも、「電子部品工場」の表記があります。以前に指摘したように、「中心都市に隣接した町村」は、「中心都市に各種の機能を依存できる」ため、「産業・学校・医療・交通」の整備に費用を回さずに済むため、「子育て支援」「移住者支援」に費用を投入できるわけです。隣接して伊那市、そして近くに駒ヶ根市があり、「依存」できます。この「南箕輪村」も「保育所」「給食センター」に費用を投入しています。高速道路のインターチェンジがあって、東京・名古屋・大阪に直行バス便があるというアクセスの良さ、工場が立地して地元に就業先があり、他の近隣都市へも通勤ができる、商店街はありませんが、商業・学校・病院といった機能が、他の都市に依存できるということが、大きな理由です。「子育て支援」「移住者支援」が「どこでも指摘」されますが、「それで人口が増加する」ということではありません。「基本条件の重要性」、特に「交通」と「隣接都市への機能依存ができる」ことが、最も重要です。今年の共通テストでも、「土地利用の変化」の問題が出題されましたが、この地は、「河岸段丘」といった地形から、「土地の安さによる、インターチェンジ立地、工場立地」といった人文まで、地理の読図問題に利用できるともいえるでしょう。ちなみに、未来を考えてみましょう。実は、東海道新幹線の開通、その後の三島駅や新富士駅の開設によって、三島市および隣接市町に移住者が増加、かつて人口が増加しました。しかし、移り住んだ移住者の子供たちが、高校卒業を迎え、「ものの見事」に、地元を離れ、これらの都市は人口が減少しています。本来ならば、人口が増加した時に、広域合併して行政をスリムにするとともに、移住者定住策に「投資」ができたのですが、人口が減少した今は、「広域合併」の余力はなくなりました。何とかやっているのは、「新幹線による遠距離通学の補助」で、高卒後すぐではなく、大卒まで引き留めるのが「やっと」という状況です。実は、某テレビで「遠距離通勤」がよく放映され、この「静岡県」が登場します。みんな揃っていうのは、「学びたい分野が地元にない」ということです。よく、「地元大学が、地元に必要な分野の学部・学科を開設する」のですが、それは「必要かもしれないが、学びたい分野ではない」ことが多いのです。九州の某県の大学が、「介護福祉」関係の養成課程を閉じました。慢性的に希望者が少なく、地元では必要だから開設したのですが。希望者が少なければ、大学教員の維持はできません。かつての、大学進学率上昇期に新設された大学で、このことを考えて実績作りをしてこれば、「生き残り」は可能だったのですが、今となっては・・・。このように、「未来まで考える」ことが「最も重要」でしょう。「マスコミ」「地元公務員」に求められる「視点」です。