「わたしとあなたのあわいのことのは」

「好き」
 家族に抱く「好き」、ただ見た目が気になる「好き」、憧憬の対象としての「好き」……千変万化の色合いをもつ「好き」を言葉にするのは難しい。
 この短編集は、少女たちの、ともだちとしての「好き」に、わずかに別の色彩を帯びた想いを描く短編集です。
 
「変わり者のあなたと諦めの悪い私」
 着飾ればきっと綺麗なはずの幼なじみはまるで身繕いに無頓着で……娘らしくともに着飾る夢と、そんな夢を抱く「私」に、微かにもどかしさを抱く幼なじみ。
 温度差と、それでも通じるものを抱くふたりの体温か甘やかに切ない物語
 
「心ばかりの悪だくみ」
 過保護に過ぎる乳母ロボットの目を疎ましく思う中学生たち。
 大人の監視のない場所で、ふたりだけ、女の子らしい内緒話もしたい……少女らしさが花ひらく物語
 
「雪が溶けたら」
 冬に閉ざされてしまった大地、来ることのない春を待つふたり。
 家庭の事情で生活に余裕をなくし、けれどもそれを淡々と受け止める幼なじみと向き合う「私」の心の傷跡の物語
 
「イマジネイション憧憬」
 学習用のバーチャル空間で目にする「彼女」に憧れる「私」。シンプルに美しい彼女には秘密があった……バーチャル空間に投影されたアバターの向こうに見え隠れする揺れる気持ちの物語
 
 子供ではない、けれども大人でもない。
 旅立つまえのあわいのひととき、言葉にならないけれども確かにある……繋いだ手のぬくもりが感じられる作品集。