問題:1994年映画「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」で、ルイはある感染症が流行していたニューオーリンズの街で、母親を亡くしたクローディアを見つけ、血を吸ってしまいます。そのとき流行っていた感染症とはなんでしょう?
 
解答:①黒死病(ペスト)
 
「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」の登場人物クローディアは、死後数日は経っていた母親に縋って泣いているところをルイに見つけられ、血を吸われます。18世紀末のことです。それまで人の血を吸うことを忌避していたルイが関心を持った少女を、レスタトは仲間にします。吸血鬼クローディアは、永遠の少女として、レスタトとルイ、二人に「育てられる」ことになったのです……
 
 ペストはいまでも存在する感染症です。ただし、いまでは薬(抗生物質)があるのでかつてほど恐ろしい病気ではありませんが、医療体制の充分に整っていない地域での発生は、充分に脅威です。

 19世紀になると、いわゆる先進国においてはペストは大流行しなくなります。ペストと入れ替わるように、インドの風土病であったコレラがパンデミックを起こすようになるのですが。(コレラは現在でも途上国を中心にパンデミックを起こしている感染症です)
 
 余談ですが、いまだ生々しいペストの記憶と、新しい感染症であるコレラを脅威と感じながら、「外からやって来る得体の知れないものに脅かされる英国」という、当時の人々がぼんやりと抱いていた不安感を「恐怖」として書かれた作品にブラム・ストーカー「ドラキュラ」があります。
 
 18世紀末のニューオーリンズにおいては、まだペストは地域流行する病気でした。
 また、黒水熱(マラリア)は、当時世界的に流行し人々の命を奪っていました。(日本でもかつて土着のマラリアは存在し、周期的に高熱を出すことから平安時代~江戸時代の日記や文学などには「瘧」「わらわやみ」など比較的ありふれた病気として登場しています)。キニーネがマラリアに効く薬として登場するのは、1820年代のことです。そしていまでも熱帯地方を中心に猛威をふるい、効いていた薬にも耐性を獲得しながら、地球温暖化とともにいちどは根絶された地域にも、ふたたび姿を現しつつあります。
 もちろん当時は天然痘も根絶されておらず、(1980年に地上から根絶)すでに種痘の技術はあったものの定期的に流行する感染症でした。
 
 「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」では、ペストの流行で、となっていますが、正直、当時インドの風土病に過ぎなかったコレラを除けば、選択肢のどの感染症が流行していてもおかしくはない……それが18世紀末の「世界」です。
 
 クローディアはペストの流行するニューオーリンズから、母親と一緒に避難するところだったようです。しかし、母親が病気に倒れ、ルイとレスタトに見いだされて長い時間を彷徨うことになるのですが……それが彼女にとって幸せだったかどうか、いまでもふと、考えることがあります。
 
出典:1994年公開映画「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」
参考資料:「グローバル感染症」日経メディカル
「ビジュアル パンデミック・マップ 伝染病の起源・拡大・根絶の歴史」日経ナショナルジオグラフィック社
丹治愛「ドラキュラの世紀末―ヴィクトリア朝外国恐怖症の文化研究」東京大学出版会