2512.昨日のコンサートの感想
川村文雄サロンコンサート、素晴らしい演奏でした。川村君が高校生の時からレッスンに来ておりますので、長い長い付き合いです。彼の生演奏を聴くのは本当に久しぶりで、前回ステージでのリサイタルを聴いたのが何年前だったのか全く定かではありません。演奏は良い意味での清潔で端正な所は昔から変わっていないもので、それがある意味で彼の中で守られてきていることに、まずは安堵しました。もちろん、彼も年齢的にも、すでに中堅であり、演奏の中に、より何かを期待されますから、大きなプレッシャーを感じていたに違いないと思います。そんな中で、微細に変化する音色がより増えたこと。そして、音楽の呼吸とでも言える、テンポ・ルバートやリズムが、ハーモニーに則った上での自然な、そして、より複雑に表現されたことに、つまりは、より洗練されていたことが特筆出来ます。ここまで、僕の心が憎いほどに次から次へと鷲掴みにされるとは思いもしませんでした。本当に、自分が教えたからではない、決してそのような贔屓目ではなく、彼の演奏は上手いとか下手とかいう次元を逸脱しているのは当然ことながら、既に崇高な魂まで上り詰めた演奏と言えるでしょう。お恥ずかしい話、僕自身が最初の一音から、最後の一音まで、魅了され、涙が溢れて出てくる出てくるという現象に、自分自身でも戸惑いながらも、それを止めることはできませんでした。僕の覚えている限り、殆どの作品の過去に行ったレッスンの断片が、頭の中をよぎり、その郷愁もあって、現実に聴こえてくる音を聴きつつ、僕の頭の中は現実と過去とが重なり、僕の見てきた彼の今までの人生と同時に自分自身の人生も追いながら、僕の頭の中は、ある種の混乱状態に陥りました。改めて感じたことの一つに、上手い人ほど、はこの響きを味方につけると思いますが、その大きさに見合った音量、それを見事にコントロールし、やはり豊富な演奏経験から、彼の感覚は研ぎ澄まされたのだと思いました。また、往々にして、音の出す所は意識できても、音の無くなる瞬間まで意識が行き届いている演奏は、世界中見渡しても、そうはいないと感じますが、それが見事に隅々まで反映されていたことにも、大変驚きでした。総じて、僕の想像以上の変化を遂げている演奏を目の前で繰り広げられたことに、ただただ心からの喜びに満たされ、おかげで僕自身が、今とても幸せな気分に浸っています。これからも、定期的に拙宅にてサロンコンサートを行ってくれる意思を確認することができました。僕も楽しみですが、皆様にも期待して頂けましたら幸甚です。