最近、つくづく思うのは、時の流れの感じ方が、年齢と共に大きく変化してきた。若い頃を思い出すとゆっくりなテンポで長い曲を好んで聴かずに、テンポの速い曲、リズミカルな曲を好んでいた。例えばシューベルトの幻想ソナタなど、集中力が持たず聴いていられなかったものだ。
今は、そのような曲は卒業したのかも知れないと思う。とにかく、ゆっくりで、どちらかというと音の少ない曲に惹かれる。それは、多分、作曲家の精神的な思いが、より投影され、感じられるからかも知れない。マーラーの9番のシンフォニーの第4楽章を聴いていると、マーラーの至った境地を想像出来るし、なにしろ心地良いのだ。20分を超える演奏時間であってもだ。時の流れの感じ方が明らかに違う。永遠に終わらないし、永遠の魂を感じ、感動的である。歳をとるのも悪くない。こんな楽しみを味わうことが出来るようになるなど、若い頃は想像もしていなかったから。