スペインに1ヶ月滞在した時。シエスタ、いわゆる昼休みのことだが、昼食後に昼寝をすることで、この生活を一度味わうと、すっかり、そのペースに慣れてしまった。当然、夕飯は夜の9時とか10時。レストランも夜中の2時ごろまで開いていた。そんな時間の過ごし方をすると、とにかく1日が長いのだ。この1日が長いとは、時の流れがゆっくりに感じられる。まるで、スペインの時計は、日本の時計よりも、ゆっくりと時を刻んでいる錯覚を覚える。時の流れがゆっくりだと思うと、不思議なことに気持ちに余裕が生まれる。それは心地良く、さまざまな価値観も変化し、生活そのもの、人生そのものが楽しく感じられるのだ。
その経験から、私は気忙しい東京の都心に住んでいても、まるでスペインにいるかの如くに暮らしている。人が人でいられるのだ。だから、1日は24時間ではなく、48時間、つまり2日て1日だと思って生活している。こう思うだけで、ふとした時に何かしらの感覚やら考え方が違うことに気がつく。例えば、何がなんでも今日やらなくてはならないという強迫観念がなくなる。まあ、明日でもいいやと。
芸術家にとって、この感覚は貴重だと思う。芸術家でなくても、人にとって、人が人らしく生きる上で、大切なことだと思うのだ。
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