数週間前に私は自分の演奏を初めてネット上にアップした。それは、地味な選曲ばかり。
理由は、まずは30代の頃に発症したジストニアにより、技巧的な曲をきちんと弾けなくなったがゆえ。
次に、年齢を重ねると、派手な技巧的な曲より、ゆったりとした音の少ない作品をじっくりと弾いたり聴いたりする方が心地良くなったのもある。
私は、自分が指を使えなくなったことにより、それは、もちろん、そうなってしまった当初はショックだったが、そのおかげで今があると思っている。
もともと、演奏家志望でもなかったし、やり直しをヨーロッパで始めて、昔は日本で活動するつもりもなく、つまりは、ヨーロッパに骨を埋めるつもりでヨーロッパにいったこともあり、なぜなら、前にも述べたが、ヨーロッパの発声や奏法を日本の教育現場で教えることは、水と油のようなもので、絶対に馴染まないと考えた故で、そのような理由から、ヨーロッパで生きる決意のもと、ヨーロッパに住み始めたのだ。おそらく、ヨーロッパでやり直しをした日本人の殆どは、帰国せず、ヨーロッパで活動しているに違いないと思う。で、紆余曲折を経て、結果的には、帰国せざるを得なかったのだが、指にハンディを持ったおかげで、じっくりと、良い発声や奏法を研究することができ、今に繋がったと感じる。もし、自分が日本の教育機関で教えたり、演奏活動をしていたら、現在の私の音色や奏法の研究の域には到達出来なかったと感じる。だから、これはこれで良かったと心底思うのだ。私は生徒たちに言っているのは、真の芸術家になりたければ、難曲で人を圧倒するのではなく、例えトロイメライであっても、それで、人に感動を与えられる演奏が出来るようになるようにと。