正直に言わせてもらおう。音は不思議だと思う。これから申し上げることを信じても信じてもらえなくても、どちらでもいいのだが。
いつも門下生の発表会の演奏を客席で聴いていて実感することは、音には段階があるということ。

私のレッスンを受けはじめて間もない生徒は、一般的に弾かれている良い音で弾いている。この段階のホールでの響きは、人にもよるが、楽器の中だけで音が混濁して聴こえる。

次の段階の人の音は、楽器の中から外に出ているが上には上がらない。ステージの上の楽器の高さの辺りで鳴っている。

次の段階、ここからは突然少人数しかいないのだが、ステージの上の天井まで登る音。

次の段階、これは数人しかいないのだが、楽器から音が出ている感覚がなく、何故か客席で音が発生していて、客席で漂っている。もしくは何処から聴こえてくるのかわからない感覚になる。

音質の観点から言えば、段階が上がるほど、音そのものが平面的な質から立体的になり、また、段階が上がるほど、柔らかくなり、品格が宿る。そして、オーケストラのように美しく混じり合う。

同じ場所、同じ楽器という条件で聴くから、その差がわかりやすい。

発表会は人数の関係から、関係者のみで行われているのだが、この感覚をみなさまにも味わっていただきたいのが本音ではある。

とくに夜の部になると、最終段階の音、多分、皆さんが聴いたことのないような、とんでもない音を聴くことができる。それは、超一流の世界でもほんの一握りのピアニストしか出していない音に匹敵する。まるで魔法のような。

音は不思議だと、毎回の発表会で実感するし、最高級の音を聴いた時に、なんとも幸せな気持ちになる。