私見だが、私の知る範囲、昔の桐朋生のテクニックの水準は凄まじかった。あの時代ならではの特有のテクニックで、現在はその勢いは無くなってしまったと言えるのかもしれない。井口先生達を中心とした教育は、賛否両論はあるが、とにかく弾くという意味において、これ以上の速さで弾くことはできないレベルの演奏が求められていた時代だった様に感じる。私の学生時代でも、井口愛子先生はまだ現役で、東京音大に移られてはいたが、井口愛子先生の教えの香りがまだ色濃く残っていた。私が師事した中島和彦先生も井口愛子先生に習った方だったので、井口先生流のテクニックの習得のレッスンに始まった。それはスパルタなものだった。私より達者に弾く門下生は山ほどいて肩身が狭かった。
現代の日本の若手と比較すると、その演奏の質、テクニックの質は良くも悪くも異なると思う。
何をもって良いテクニックということが、時代と共に変化してきたように感じる。