まとめようと意図的に思っている演奏が多々ある中、私は敢えて言いたい。
究極的には、まとめようと思わずに、結果としてまとまっているのが良い演奏だと思う。
そこには音ではなく、響きで弾く演奏であらねばならない。
響きで弾くと、まとめようと意図的に思わなくても、結果としてまとまるのだ。
そこには、色とりどりの色彩が存在しなくてはならない。
これに気がついたのは、画家、佐々木麦氏の作品のおかげだ。
まとめようと思って描いている絵は、見ていてわかる。残念だが、今の私の感覚は、絵画にしろ演奏にしろ、まとめようと意図的に思っている作品や演奏は表面的な美でしかないと感じるに至った。まるで、小さな額縁の中で完結してしまっているのだ。想像力を掻き立てる、宇宙がないとも言える。これは美学的見地の相違なのだが。だから、私とは異なる美も存在していいのだが、私は魅力を感じない。もっと言ってしまえば、美に対する意図的冒涜、犯罪にすら感じてしまうのだから仕方がない。
しかし、まとめようと意図的に思わないでまとめるには、相当高いレベルの技術、基礎があって、なおかつ、それ相応の人生哲学が必然となる。だから、その域に到達している人は稀だ。何はともあれ、佐々木麦氏には感謝しかない。