誰でも鍵盤を押せば音は出る。猫が踏んだって同じ音は出る。その音は響いている。
でも、世界を見渡した時にほんの一部だが、そうではない響き、本当に響かせている演奏者が少なからずいる。本当に響かせるには、一般的な身体の使い方とは全く違う使い方をしなければ出来ない。
それを知っているのは、世界中のピアノ人口のうち、ごく数パーセントしかいない。
日本では皆無に等しい。
世の中、何事もそんな物ではないか。世界中のピアノ弾きが全員揃って、本当に響かせられるなんてことは、絶対にあり得ない。だから芸術なのであり、芸術とはそういうものなのだ。とても奥深い世界であり、また、そうなければならないと思う。普通にしか響かせられない人が大勢いるから、本当に響かせている人の貴重価値が生まれる。もし、自分がそうなりたいと思うならば、根本から変えなくてはならない。私の生徒にぜったいにソコロフのようになりたいという20歳の子がいる。大学に行ってもそんな教育は受けられないので、大学には行かず、ひたすら練習の日々。そして名古屋から東京まで毎週、長距離バスでレッスンに通って来ている。これは物凄いことだと思う。彼女の夢がいつか叶ってほしいと切に願っている。