私がザルツブルクのマスタークラスでニコラーエワ先生の響きをピアノの間近で初めて耳にした時。今でもその響きは私の記憶にしっかり残っている。とにかく信じられない圧倒的な何かが存在していた。私のそれまでのピアノ人生に於いて耳にしたことのない、それは魔法のように楽器を扱っていた。圧倒的な美に対峙すると、人はただ立ち尽くすしかない。それまでの自分のピアノ人生を全て捨て去っても、絶対に欲しい響きだった。そこから茨の道を歩むことになるわけだが、そこには絶対的な意志の強さが必要だった。どんなに挫けても、前に進む。何度も声を上げて泣いた。
若い人たちは、昔の私だと思う。
私のように強い意志を持って、人生を歩んでほしい。