昭和の時代を思い返すことしばしば。私にとっては、今時の本場風ではない、紙に包まれたスプーンとお冷やとともに出てくる黄色いカレーライスが象徴的だ。全てのことが現在とは異質と言っても過言ではない。

ピアノをはじめ、習い事、授業、部活動。根性という名の言葉のもと厳しい厳しい世界だった。演奏するホールも現在の豊かな音響とは比にならないデットな空間。すなわち響かないから、必死に鍵盤の底をえぐるようなタッチが主流。黄色く染まった象牙の鍵盤。きちんと弾くことが何よりも目標であり、そういう美意識が重んじられていた。それは負の遺産とも言えなくないのだが、にもかかわらず、どこか懐かしいのだ。

思うに、みんな夢があった。努力すれば、きっと報われる。物質的なことを筆頭にきっとこの先、豊かになれると信じることができた。

それが黄色いカレーライスな昭和だった。