ヴァイオリンの世界はピアノの世界と大きく異なる。誰でも知っているように、ヴァイオリンは自分の楽器で弾くことができるが、ピアノはそうはいかない。私は幸運にも、非常に高価なヴァイオリンを間近で聴かせてもらったことがある。一般に聴く楽器とは比にならない、この世のものとは思えない麗しい響きだ。もちろん弾き手も良くなければ、その魅力は出ない。なんでも聞くところによると、国際コンクールに出る時は、何百万円も払って良い楽器を借りるとも聞く。そのくらい楽器が違うだけで響きも違ってしまい、おのずとそれが結果に影響することがあるらしい。ヴァイオリンに関しては門外漢の私にだって良い響きかどうかの違いはわかる。それだけ、響きというものが演奏に大きな影響を与える。
ピアノの場合、同じ楽器を弾くにしても、弾き手により響きは大きく異なる。良い響きの方がいいに決まっている。もちろん響きだけの要素だけではないのだが。だから、良い響きってなんだろう?に始まり、その目指す響きがイメージ出来たならば、それでは、それを実現するためにはどうしたら良いのだろう?ということに執着して精進するべきだと私は思う。特別な演奏には特別な響きが存在する。音楽が良いのはもちろん、響きもとても大切な要素だ。世界中を見渡せば、上には上がいる。最高の響きを求めて、まるでヴァイオリンの世界のように、特別な楽器を借りるかの如く、ピアノも楽器が違うのではないかと思わせるかの如く、響きを大切にするべきだと私は思う。