ピアニストが演奏をする時を思い浮かべてみてください。よくご存知ない方が思うのは、ピアニストの頭の中は指のこと、特にミスをしないことを思って弾いているイメージではないでしょうか。もしかしたら、そんな方もいるのかもしれませんが、私はそれが全くないとは言えません。まあ、たまに瞬間的に思うことはあります。実はとても複雑で多種多様で人によっても異なるのかもしれません。一つ言えるのは感覚的に指で弾くというより耳で弾いていると表現したいですね。耳で判断してその音や響きに則って指や身体が無意識のうちに反射しているように思いますね。ただ、その無意識の中にとても難しいことがあり、その中の一つを申し上げますと、そもそも楽器は一台一台違うし、同じ楽器でも状況はさまざまな要因によって変化してしまいます。中でも鍵盤を押した時に、どこらへんを目掛けて弾くと、どんな響きがするか?ということを一番大切にしているのかもしれません。もちろん無意識のうちのことで考えてはいません。そんな余裕ありませんから。考え始めたら演奏は崩壊してしまいます。曲が進むにつれて臨機応変に行わなければなりません。車の運転に似ていますよ。ずっと目的地まで信号が青のままで止まることが出来ないようなものです。で、鍵盤のどこを狙うか?どのあたりの深さなのか?を変えるのが超一流の演奏です。申し訳ありませんが音大生あたりでは、そんなことをやらなければならないと知っている人はまずいません。プロでも少ないと思います。確かに知識としては知っていても、良い方法が身についている人も僅かなんですね。でも、ピアノを弾く皆さん全員が、そういう類のことが出来たら、もしかしたら、ホロヴィッツが百万人生まれてしまうことになるかもしれません。なんだか、それはそれでいいことなのかそうではないのか?私の頭ではよくわかりませんね。まあ、いいのかもしれませんね。百万人もホロヴィッツがいたら、ホロヴィッツの希少価値がなくなってしまうとは思いますが。ガヴリーロフ先生がマスタークラスで弾いてくださるときに、その辺のことはもちろんおやりになっていて、弾いているうちに楽器の状態が変化していき、また同じ音を出そうと思われた時に、ちょっと狙ったところが違ってしまったんですよ。聴いている私はほんのちょっとのことなんですけど、わかっちゃったんです。ミスタッチという意味ではなく、響きを間違えたと言ったところです。で、また先生が弾いた時には修正され、その変化してしまった楽器の状態に見事に合わせていらっしいました。これ本当のことですから。いやはや、超一流の方はすごいことをしていますよ。もちろん、これは耳で行なっているのですね。