ふと思ったが、よくよく考えたら、今ロシアピアニズムに傾倒するきっかけとなったのは、広瀬康先生に師事したことが大きかったのかもしれない。
当時、東西冷戦の最中、ソ連のことは壁の向こうの遠い存在だったのだが、そんな中で広瀬康先生はチャイコフスキー国際コンクールで本選まで進み、見事入選された。
そんな先生の存在のおかげで、ロシア作品にも興味を持ち、いずれは自分もチャイコフスキー国際コンクールを受けてみたいなどと大きな野望を持っていたのだが、人生とは不可思議なもので、ザルツブルクに留学し、ある意味では二コラーエワ先生との出会いはあったが、私はドイツ音楽やドイツ、オーストリア文化に傾倒していったので、考えてみたら、ドイツ音楽にどっぷりとはまっていき、チャイコフスキー国際コンクールの存在とは無縁の修行僧のような、地味な地味な生活を送っていた。
で、広瀬康先生。
とにかく凄かった。
演奏もレッスンも。信じられない域だった。一流の音楽家の持つ不思議なオーラを感じた。
一つ後悔しなくもないのは、そのままザルツブルクなんかに留学しないで、先生の下で勉強を続けていれば人生違っていたかな?と思う。今更仕方がないのだが、まだまだ分別もなく、青かったし、たくさんご迷惑もかけてしまったから、日本を離れて正解だったのかもしれないが。
とにかく、今でこそ失礼ながら疎遠になってしまい近況は存じ上げないが、だから昔の先生の話になってしまうのだが、しつこいようだが、ものすごい方でした。
演奏もレッスンも刺激に溢れ、本当の芸術家に出会った!と思った。今、先生に習っている若い学生たちは、そんな先生を知らないかもしれない。とにかく凄い方なんだよ、と言ってやりたい!
ハイドン、ベートーヴェン、シューベルト、ブラームス、ラフマニノフ、スクリャービン、プロコフィエフなどなど。演奏もレッスンも刺激溢れる高水準な世界。
一流の音楽家ってすげ〜と思った。
音楽っていいなあ!と心から思えた。
そんな先生に基礎を手取り足取り教えていただくことができ、本当に感謝している。
お体を悪くされ演奏はされていないようだが、あの凄さを、今習っている生徒さん達は知ることができないのは、歯痒い。ちゃんと、先生を敬いレッスンを受けてほしいなどと、偉そうに思ったり。
ふと思い出したが、先生のお宅のピアノの横の本棚に吉田秀和全集の本が並んでいた。なんだか難しそうな本だなと思いつつ興味を引いた。で、私も親にねだって買ってもらったが、やっぱり難しかったが、必死に読んだ覚えがある。先生のようになるには、これは読まなくてはと思ったことを懐かしく思う。
とにかく、まぶしいエネルギーに満ちた陽の光のような方ですね。まさにピンピカですよ!