まったくもって個人的主観なのだが、私はごく一部のロシア人ピアニストたちのことを、確かにロシアピアニズム の教育の中から育ってはいるが、ロシアピアニズム という、ある限られた枠組みの中にはいない、もっと、インターナショナルでスタンダードな演奏をするピアニストたちだと思っている。ヨッフェ先生、ガヴリーロフ先生、ソコロフ氏の3人は世界の最高峰の実力を持つ人達だと思っている。これはピアノを自由自在に操ることができる、ピアノという楽器の性能を知り尽くしているという、ある意味で偏った見方でもあるのだが、それがまずできなくては、素晴らしい音楽は実現出来ないという考えに基づいている。
そのお三方には及ばないが、私は確かにロシアピアニズム に傾倒してきて30年たち、ロシアピアニズム の拙著も上梓したのだが、正直、他者からロシアピアニズム の教師と思われることに、いささか違和感がある。なぜなら、前途したように、素晴らしいお三方のピアニストの演奏は既にスタンダードであり、私の教えているピアニズムもロシアピアニズム の域を既に出ていると感じるからである。よって、今現在の私の感覚に正直に述べると、私はロシアピアニズム の教師ではないのかもしれない。私よりもロシアピアニズム の教師としての自覚がしっかりおありになり、私よりもロシアピアニズム に詳しく、愛している方がいらっしゃるように思う。だから、私のことをロシアピアニズム の教師と思う方がいてもいいのだが、なんだか少し、他のロシアピアニズム の教師の方に申し訳ない気持ちがなくもないのだ。