ザルツブルクの冬は美しい。そんなに美しいからこそ私は孤独をひしひしと感じた。私はひとりでもここでこうしているという気持ちが私を強くした。芸術家として二本の足で遠いヨーロッパの地で立っている。
想像してほしい。今のように日本を簡単に感じることができなかった。日本は地球の果ての遠い遠い国だったのだ。だから私は少しだけ大人になれたのかもしれない。
少しだけ大人になって自分自身しか頼ることができなかったから、シューベルトが見えたのかもしれない。
切なくて、苦しくて、寂しかったが、それ以上に何にも増して喜びがあった。
シューベルトの儚い人生が、真っ白な雪に反射する光のごとくに眩しいのだ。
何と美しい世界だろう。
それを感じられるようになれたこと。
それは少しだけ大人になれたからだろう。