長年ピアノをやってきて思うことの1つに良い面と悪い面があると実感する。

さまざまなことがわかってくることによって新たな喜び、思ってもみなかった美しい風景が広がってくる。

何物にも代えがたい貴重な財産を得ることになる。

 

がしかし、その逆もある。

それはある種の不幸ともいえるかもしれない。

なぜなら、わかってしまったがために、

どんな演奏でも手放しに喜べなくなってしまったことである。

あのピアニストも、このピアニストも、といった具合にある意味純粋に楽しめなくなってしまった。

そんな頃が懐かしいとさえ思う。

どんなピアニストの演奏を聴いても愉しくて仕方がなかった時代を。

心ときめかせて聴いていた時代を。

 

もう、そんな喜びは味わえないと思うと一抹の寂しさを感じる。

秋の気配が漂ってきたが、人生の秋も迎えてしまったような。

もう二度と戻らない春や夏の頃が眩しく思える。