今、サムエル・フェインベルクの弾くバッハの平均律を聴いている。

柔らかな音色でハーモニー感豊かで、アゴーギクも自然な演奏。

空間に自由に音が舞っている様は非常に心地よい。

昼下がりにお茶を飲みながら聴いている。

なんと贅沢なひとときだろう。

往年の巨匠と呼ばれる演奏家たちのタッチを聴いていると、今は忘れ去られてしまった大切な何かが存在しているように思う。

シュナーベル、コルトー、ネイガウスなどなど。

ピアニストの齋藤正樹氏も同様のことを述べておられた。

どうして今の時代、こんなにも演奏が変わってしまったのだろう。

硬く、しっかりしてしまった現在。

音そのものが死んでしまった現在。

人々の心の奥底の原点に帰るべきだと思う。

弾くという行為に一体、何を求めているのだろう。