《魂の深さ》
去る11月26日、愛知県は高浜市にあるピアノホールF(http://www.pianohall-f.sakura.ne.jp/)にてリサイタルを行いました(吉永哲道ピアノリサイタル ~ロシアピアニズムの響き~)。ホールのオーナーでいらっしゃる深谷直仁先生、また当日ご来場頂きました皆様に心より御礼申し上げます。
私自身リハーサルの段階から、ホールの豊かな音響と1960年代のスタインウェイの音色に大いに触発され、本番でも存分に音楽に没頭する事ができ、心底演奏する喜びを噛み締められた時間でもありました。
「ロシアピアニズムの響き」と銘打った演奏会にも関わらず、プログラムにロシアの作品が全く含まれていなかった事を疑問に思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ロシアピアニズムとは世界に分布する様々なピアノ流派の一つであり、無論ロシア音楽の演奏に限定されるものではありません。
私は11歳の時モスクワ音楽院教授であられた故ヴェーラ・ゴルノスターエヴァ先生に出会い、以来先生の下で18年、そして現在は東京在住の大野眞嗣先生に師事し、そのピアニズムの研鑽を重ねています。
歌う音。
美しい響き。
そして単に美しいだけでなく
ただ一音をして
聴き手の琴線を震わす響き。
なぜ、ロシア流派を受け継ぐピアニストたちはかくも音色にこだわるのでしょう。
それは彼らが演奏において、理論や理屈で音楽を捉える(整える)よりも、一つの音がいかなる意味を持つのか、一つのフレーズが何を語らんとしているのか……作品に託された感情や思想を抉り出す事を最優先するからこそと、私は確信しています。
響きの多彩さ、深さが増せば増すほど、演奏に命が宿る。
そして作品の深部に迫る事で、演奏者の感受性が更に磨かれていく。
つまるところ、響きの追求は演奏者自らの魂を深める行為に他なりません。
幼き日のロシアピアニズムとの邂逅に私はただただ感謝しながら、
音楽に携わる限り「一音に魂を込める」信念を貫きたいと思っています。
またどこかの会場で皆様とお会いできます様に。
吉永 哲道