私がモーツァルテウムに留学していた頃のピアノ科主任教授だったペーター・ラング先生。
見るからに線の細い神経質そうな細身の身体。表情はいつも眉間にしわを寄せといった印象。
正直、この先生じゃなくてよかったと思った。
門下生たちは苦労していたな。
でも、このラング先生。
生粋の芸術家。
真の芸術家だったと思う。
ラング・クラスの学生の弾くモーツァルトの演奏には一種独特の狂気がみなぎっていた。
オーストリアの風土と伝統を感じさせる独特のモーツァルト。
19世紀末の退廃的なモーツァルト。
クリムトの絵を連想させるようなモーツァルト。
今となっては、あのモーツァルトが懐かしい。